特攻で30人の同期が一度に死んだ 96歳の元少年飛行兵、子どもたちに伝える戦争体験

梅村武史 (2021年8月15日付 東京新聞朝刊)
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少年飛行兵当時の四十八願さん(本人提供)

 終戦から15日で76年を迎えた。栃木県佐野市石塚町の四十八願(よいなら)好造さん(96)は、元陸軍少年飛行兵だった経験を地元の小学生に語り継ぐ活動を続けて4半世紀になる。軍人経験者の話を直接聞ける希少な機会で教育関係者から感謝されており、「教え子」の数は約2万人を超えた。「次世代に伝えることが生き残った私の役割」。100歳を前に意気軒高に語る。

1人の青年の揺れる心を伝えたい

 四十八願さんは17歳だった1942年、水戸市の陸軍航空通信学校に志願入校。多くの同期が激戦地に赴き、戦死するなか、成績優秀で後進の指導係として学校に残った。1943年に浜松市の連隊本部付に配属され、終戦まで務めた。1944年10月の特攻作戦で30人の同期を一度に失ったときは涙が流れたという。

 語り部の活動は70歳を過ぎてから。地元の石塚小校長に強く依頼され、始めた。以来、市内の小学校をめぐり毎年、10回前後の講演を続けてきた。

2021年版資料を手に講演への思いを語る四十八願さん=佐野市で

 四十八願さんは講演時、まっすぐ前を見て時折強い言葉を交ぜて語りかける。飛行機乗りへのあこがれ、当時の世相と軍人としての決意、厳しい訓練、同期との別れ、悲報、喪失感…。伝えたいのは一青年の揺れる心だ。「自分と重ねて何かを感じ、考えてほしい。戦争は遠い昔のことと無関心にならないで」と願う。

受講した子どもの手紙は「宝物」

 自宅には受講した子どもたちから届いた手紙やはがきを貼り付けたノートが山積みになっている。「宝物です」と四十八願さん。今春、思わぬ1本の電話が自宅にかかってきた。「立派な活動です。お体に気を付けて頑張ってください」。感謝の言葉を贈ったのは福田富一知事だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大で現在のところ講演の予定は入っていないが、講演の際に配布する体験や経歴をまとめた資料を2021年版に更新。「いつ呼ばれても登壇できる。準備は万端」と笑った。資料は希望者に郵送で配布している。問い合わせは四十八願さん方=電話0283(25)1026=で受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年8月15日

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