発達障害「グレーゾーン」の子にも効果 心の問題への対処法を学ぶ学校プログラムに注目

長田真由美 (2021年11月26日付 東京新聞朝刊)

「楽しいことを探す」授業の導入に使われる漫画 ©Shin-ichi Ishikawa&Yoko Kamio

 発達障害の特性は認められるのに、医学的な診断がつかず、適切な支援を受けにくい子たちがいる。「グレーゾーン」といわれる状態で、生きづらさを感じる場合も多い。そうした中、専門医らが考えた、心の問題への対処法を学ぶ学校プログラム「こころあっぷタイム」が注目を集める。グレーゾーンの子を含め、全ての子がストレスに適応する力「レジリエンス」を身につける効果があるとされる。

通常学級の6.5%に発達障害の可能性

 発達障害は、生まれつき脳の発達に偏りがある状態だ。対人関係が苦手、こだわりが強いなどの自閉スペクトラム症(ASD)、落ち着きがないといった注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などがあり、それぞれに診断基準が設けられている。

 発達障害クリニック(東京)院長の神尾陽子さんによると、こうした診断がつかないのが、グレーゾーンだ。発達障害の特性がいくつかあっても基準を満たさないためで、本人は生きづらさを、保護者は子育ての悩みを抱えることも多い。文部科学省の2012年の調査によると、発達障害の可能性のある子は通常学級に推定6.5%。実際にはもっと多いとされる。

小学4~6年「ストレス軽減」を学ぶ

 発達障害の特性の現れ方は非常に多様だ。神尾さんによると、グレーゾーンの子も同様だが、診断がついておらず、医療で手助けすることは難しいため「教育や福祉の分野で支援をするのが理想」と話す。

 そこで注目したのが、学校だ。神尾さんらと「こころあっぷタイム」を開発した同志社大教授の石川信一さん(42)によると、主に小学4~6年が対象で計12こま。現在心の問題を抱えているグレーゾーンの子ども、今後抱えるかもしれない子どもが一緒になって、困難に直面した際にストレスを軽くするスキルを学ぶ。

 基になっているのは、うつ病や不安障害などの治療で用いられる認知行動療法だ。例えば「楽しいことを探す」の授業。子どもが興味を持ちやすいよう、まずは浮かない顔の少年が出てくる漫画を見せ、「ちょっぴりウキウキを探そう」と教師が呼び掛ける。タブレット端末で好きな曲を聴く、声を出して歌う―など答えは何でもいい。友達と自由に考えを言い合いながら、何をしたら自分の心が元気になるかを知っておくことで、いざ落ち込んだときに対処できるというわけだ。

導入した学校で「自信が高まった」

 2016年度に導入した京都、岐阜、埼玉の8小学校、24通常学級の子どもに対し、石川さんらは「小さな失敗について、くよくよ考える方だ」「やりたくないことでも一生懸命やる」など18項目の調査を実施。「はい」から「いいえ」までの4段階で答えてもらったところ、授業前より自信が高まった子が増えていた。別の25問からなる調査からは、情緒面や行動面などで落ち着きが増す傾向もうかがえた。

 「こころあっぷタイム」は本年度、京都府や滋賀県などの38校が取り入れた。神尾さんは「一生で一度もメンタルヘルスの問題を経験しない人はいない」と活用を促す。

コメント

  • コンビニの弁当工場で夜勤バイト(米飯仕分け)をしてたことがある。 班長(バイトリーダー)の日本人がグレーだった。 係長がグレーだから同じ匂いの人を選んだのだろう。 2人とも誇りを持って仕事をして
    ミッドフィールド 女性 40代 
  • 発達障害というネーミングが差別を生みやすいでしょうから、そこから見直してほしい。 当事者は傷つくし、周囲からはどんな目で見られるか分からないような呼び方で、学生の頃なんか特に苛めに繋がりやすいんじゃ
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