「男子が先」の刷り込みをなくそう 男女混合出席簿の導入状況、首都圏の小学校は93% 中学校は74%
68自治体を調査 多摩地区に目立つ男女別
男女混合出席簿は、出席番号で男子の後に女子が続くのは男女平等にそぐわないなどとして、1980年代から導入され始めたとされる。東京新聞は、68自治体の教育委員会に現状を尋ね、「新型コロナで業務が逼迫(ひっぱく)している」という東京都福生市を除き回答を得た。
都内では小学校の導入は9割超。中学校は導入ゼロが16自治体で、そのうち13自治体を多摩地区が占め、武蔵村山市は「保健関係の個人情報が男女別で、混合名簿も作ると教員の負担が増す」と答えた。4月から全校で混合出席簿にする自治体が9区市町あった。
政令・中核市では、横浜やさいたまなど12市が小中学校ともに全校で導入。一方、埼玉県川口市と千葉県船橋市は小学校でも10%未満で、「健康診断の際、男女別の方が利用しやすい。二つの名簿があると混乱する」などと説明した。神奈川県のある市教委の担当者が「出席簿を男女で分ける必要はない。その都度、名簿を作ればいい」という考え方とは対照的だ。
日々使われ「ジェンダー平等教育の土台」
東京学芸大元学長で、日本女性学習財団の村松泰子理事長は「たかが名簿とも言われるが、子どもや教職員の目に触れ、日々使われる出席簿はジェンダー平等教育の土台だ。不必要に男女を分けていないか、問い直す必要がある。子どもへの教育効果を考えるべきだ」と強調した。
出席簿は学校教育法施行規則第25条で、校長が作成しなければならないと規定。日教組の調査によると、男女混合出席簿の割合は2020年度は87.1%で、1993年度の11.5%から伸びている。
全中学に「男女混合出席簿」導入した足立区 先生が感じた子どもたちの変化
女子だけ、男子だけのグループが減った
東島根中の生活指導主任、久我佑太教諭(35)は「ことさら性差を意識した指導はしていなかったが、男女別が習慣化していた」と話す。自身の出身校や勤務した学校が男女別出席簿だったこともあり、「出席簿の形が変わることを想定していなかった」という。
出席簿の変更は、足立区教育委員会が人権尊重の視点から各校に指示。「一斉にやらないと意識は変わらない」との考えだった。1年近くたち、久我教諭は生徒の変化を感じるようになった。「女子同士、男子同士だけでグループをつくることが減った。必要以上に性別を意識しなくなったのでは」
東京都は2002年の行動計画に、公立小中学校での男女混合出席簿の導入推進を明記。ところが2004年、「『男らしさ』や『女らしさ』をすべて否定するような誤った考え方で男女混合出席簿を作ってはならない」という趣旨の通知を出し、その後、行動計画から「推進」を削除した。
「ジェンダーフリー」へのバッシングが及んだ形だった。都内では今も男女別出席簿を使う中学校が4割ある。
コメント