小学校プールの水6杯分を作業ミスで出しっぱなし 校長と教諭に95万円を賠償請求した川崎市教委に抗議続々「教員不足が加速する」

北條香子 (2023年8月11日付・19日付 東京新聞朝刊)

流出事故のあった川崎市立稲田小学校の屋上プール(川崎市教育委員会提供)

 川崎市教育委員会は10日、多摩区の市立稲田小学校で、屋上プールの水をため始めたものの、止めるのに失敗し、約2175立方メートルの水を流出させたと発表した。同校のプール約6杯分に当たり、損害額は約190万円。川崎市教委は川村雅昭校長と男性教諭の過失による事故と判断し、損害のうち計約95万円を2人に請求した。市教委による校長と教諭への賠償請求に対し、市内外の教育関係者らから抗議の声が上がっている。

止めたつもりが、ブレーカーのせいで…

 川崎市教委学事課によると、5月17日午前11時ごろ、稲田小の30代の男性教諭がスイッチを操作して注水を始めたが、ろ過装置も同時に作動させてしまったため、職員室の警報音が鳴った。教諭は警報音を止めるためにブレーカーを落としたが、その際、注水スイッチの電源も喪失した。

 同日午後5時ごろ、同じ教諭が水を止めるために注水スイッチを切ったが、ブレーカーが落ちたままでスイッチが機能しなかった。教諭は吐水口を確認せず、注水が続いていたのに気付かなかったという。5日後の22日午後3時、プールで作業しようとした女性用務員の指摘で、注水が続いていることが判明した。稲田小学校のプール開きは6月21日だった。

川崎市多摩区の市立稲田小学校

 川崎市教委は、水が5日間流れ続け、プール6杯分が流出したことで、約190万円の損害が生じたと発表。他都市の事例や判例を照会したり、市の顧問弁護士に見解を聞いたりした上で、損害額の5割を2人に請求した。

「民間なら請求されない」 50件超の抗議

 川崎市教委によると、「川崎市の元教員」「家族が教員」と名乗る人らから18日昼までに、50件超の抗議が電話や「市長への手紙」などで寄せられた。X(旧ツイッター)でも、教員の過酷な労働環境を訴える「 #教師のバトン 」のハッシュタグを付けるなどして「教員不足が加速する」「もし民間企業でミスして損害を出しても請求されない」といった投稿がなされた。

川崎市の新本庁舎の隣にある、教育委員会が入るビル=川崎市で

 市教委の担当者は「反響は想定以上」と困惑しつつ「市民の税金で運営する点で民間とは異なる。本来は払わなくていいお金で、全額を税金で賄うなら住民訴訟もあり得る」と話す。「意見は受け止めているが、賠償請求も苦渋の決断だ」と理解を求めた。

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コメント

  • 本件を受けて、川崎市は勿論のこと、全国の各自治体の教育委員会は「教員にプール管理責任者を押しつけないこと。事務職員が責任を負うこと」の通達(得意技)を出さなければならない。来夏おんなじ事件が報道されな
    元教員 男性 50代 
  • 川崎市議の市古さんという方がブログとTwitterで件の操作盤の写真を公開してくれています。問題はパッと目につくところで3点。 ・表面にあるろ過機のスイッチは触らないようにという注意書きがある。
     男性 20代