「プールの水出しっぱなしで教員に賠償請求」に反響 教員あるある、設備が古い、市の責任…「ミスを防ぐ仕組みが必要」

写真 川崎市教委 稲田小学校のプール

流出事故のあった川崎市立稲田小学校の屋上プール(川崎市教育委員会提供)

 「小学校プールの水6杯分を作業ミスで出しっぱなし 校長と教諭に95万円を賠償請求した川崎市教委に抗議続々『教員不足が加速する』」という記事を8月22日に公開したところ、教員らから200件を超える反響が寄せられました。ミスを防ぐシステムづくりの提案も含め、単純な賛否にとどまらない声の一部を紹介します。
記事要約 今年5月、川崎市多摩区の市立小学校の男性教諭が、屋上プールの水をため始めたものの、止めるのに失敗し、5日間にわたり同校のプール約6杯分の水を流出させた。同市教育委員会によると、教諭による注水スイッチの操作ミスがあり、教諭は吐水口を確認せず、注水が続いていたことに気付かなかったという。教委は8月、この男性教諭と校長の過失による事故と判断し、他都市の事例や判例を照会したり、市の顧問弁護士に見解を聞いたりした上で、約190万円の損害額の5割にあたる約95万円を2人に請求したと発表。この賠償請求に対し、市内外の教育関係者らから「教員不足が加速する」「民間企業でミスして損害を出しても請求されない」と抗議の声が上がっている。
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一般職員が賠償するのはおかしい

◆中学校に教頭として勤務時、朝6時半に出勤して校内を1周し、異常がないか点検するのが仕事でした。水道メーターの数値も毎日記録をつけ、漏水や水の出しっぱなしがないかチェックしていました。

 プールの水の出しっぱなしは、ありがちなミスで、教員が水道料金の一部を支払わされるのは、たびたび報道されていましたので、事故防止のための対策と理解し毎日記録をつけていました。ミスを防止する対策を定めるのは管理職と教育委員会の責任で、一般職員が賠償するのは、おかしいと常々思っています。(教員、60代男性)

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学校プールの流出事故について、請求は妥当との見解を述べる福田市長=8月28日、川崎市役所で

◆今どき出し過ぎたら自動断水や漏水で浄水場から連絡がくるのが普通。なぜ学校の設備はそんなに古いのですか?

 どうして一般教諭が、学校設備の給水設備にも精通していて当たり前という考え方なのでしょうか。設備的な意味でも、人為的な意味でも、市が管理する施設で市の予算先送りによって起きた施設の管理不足による市の責任問題です。(30代男性)

民間より厳しく問われるのは当然

◆民間でも請求される場合はあります。請求されない場合も賞与削減などのペナルティーがあります。市民の税金で雇われている公務員なのだから民間より厳しく問われるのは当然でしょう。(20代男性)

ミスが起こりづらい環境づくりを

◆こういう作業は専門業者に頼むほうがよい。できないなら、マニュアルでも作って分かりやすく掲示するなり誰が作業しても間違いが起こりづらい環境をつくってから責任を問うべき。そこまでできていたのでしょうか。(50代男性)

◆今回の問題点は、①教員の作業手順が到底正しい判断でされたものではないように思えること(作業手順そのものの不備、もしくは教育の不備)②装置側にフェイルセーフの観点が欠けているように思えること(装置の不備)―だと思うので、これらを解決するためにこの先働きかけがあるかどうかが大切だと思います。

 感情にとらわれてその場限りの義憤で非難するのではなく、根本的な問題解決に社会全体が関心を持てれば、今回の事故も意義を持てるのだと思います。(20代男性)

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川崎市の市立稲田小学校

◆本件、損害という直接のコストとは別に、紛争解決のためのコストの分担はどうあるべきかという論点があります。市は「住民訴訟を起こされる可能性」を正当化事由として持ち出していますが、この説明は、後者のコストを回避するために立場の弱い教員をとりあえずスケープゴートにした、というように聞こえます。

 住民訴訟を起こされて「負ける可能性が高い」なら説明として分かります。でも、「起こされる可能性」であれば、市がいったん受け止める判断もあったのでは。(40代男性)

これでは教員不足は改善しません

◆教員が安心して業務に集中できる環境の構築無しには、教員不足は改善しません。(教員、50代女性)

◆子どものためには水泳の学習をしてあげたい。でも、学校ごとに違う機械操作に慣れること、水質管理、熱中症対策。印鑑漏れがあると見学になるが、「元気で登校しているのだから水泳をさせろ」「水泳帽子忘れたら貸してもらえないんですか?」と言う保護者対応。注水のトラブル…。水泳の学習を行うだけで本当に大変です。

 水泳の学習の前には放課後の時間を使って救命救急講習も毎年しています。水泳がなくなったら、どんなに楽か…と思います。それが仕事だと思うから最善を尽くしていますが、このような仕事現場にあえて働きにこようとは思わないですよね。(教員、40代女性)

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川崎市の新本庁舎の隣にある、教育委員会が入るビル=川崎市で

◆初任の頃、水泳部と運動部の顧問を同時にしていました。自分は水泳経験もなく、体育の教員でもなく、5教科の教員でした。しかし、水泳部の顧問だからという理由で、プールの管理まで1人で対応しなければならず、授業をしながら合間の時間にプールの様子を確認しにいってました。この記事を読んで、個人に請求されるのは当たり前と思い、おびえていた昔の自分を思い出しました。

 市役所や教委は、現場の温度感、切迫感は伝わっておらず、いつもこういった責任という言葉で押し付けてきています。どうか、この対応が当たり前にならず、むしろ教員志望が増えるような、対応を期待しています。まだ遅くないです。(教員、30代男性)

教委への疑問の声が、ありがたい

◆間違いの起こりやすい環境下で仕事をさせて、間違いが起こったら個人の責任にする。理不尽きわまりないですが、毎年のように聞く話ですね。プールの水に限らず、授業の合間を縫うようにあれこれ仕事をして、ミスしたら個別に賠償しなくてはならない。教員にはあるあるです。卒業アルバムの校正ミス等でというのも聞きます。何かあれば、誰にも守ってもらえないので、私は自腹で保険に加入しています。

 ただ、少し驚いたのは、この記事では教員による賠償に懐疑的な意見が見出しになっていたこと。そしてコメントにも教育委員会の対応に疑問を呈する声が多くあることです。これまでとは流れが変わってきたことを、ありがたいと思いました。

 ミスや不手際が起こるたびに、それを個人の責任と結論づけ、教員に対する指導と研修の強化を繰り返していても、ミスがなくなることはありません。人員、しくみ、環境を改善して再発防止を図るべきです。それには予算が必要ですから、広く社会全体で、その必要性を共有する必要があります。(教員、50代女性)

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なるほど!

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グッときた

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もやもや...

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もっと
知りたい

すくすくボイス

  • 匿名 says:

    お風呂のお湯張りでも自動で止まる時代ですよ。流量計付けて規定水量で止まるようにすれば良いかと。

     男性 40代
  • にお says:

    プールの水道管は大口径で、全開にすると近隣の水が濁るため、朝に少しバルブを開け、夕方閉めることを繰り返し、数日かけてプールを満水にします。だから件の小学校のように4〜5日もバルブを開けたまま放置することは通常考えられません。

    さらに、プールは満水にしたら終わりではなく、プールサイドでの残留塩素の測定と機械室での薬剤投入及び濾過器やバルブの点検を毎日する必要があり、水が出っぱなしになっていたら気がつきます。

    これらのことから、川崎市の小学校で起きた給水バルブの締め忘れは故意または重過失と見做されても仕方がありません。

    ただし、管理職や職員に賠償責任を負わすかどうかは川崎市の判断だと思います。

    それと、今回の損失は水道代だけで済みましたが、この手のヒューマンエラーは個人の資質を向上させても100%防げるものではなく、組織全体で取り組まなければなりません。そうしなければ、次は児童生徒の生命が危機に晒されるでしょう。

    にお 男性 50代
  • くまさん says:

    俺が大学生の時に相談したら、公立中学校長の親父が「これから勤務状況は悪くなる。教員になるのはやめとけ」と言った。それで、教育実習を辞退して会社員になった。

    親父もお袋も曽祖父から祖父、親父と3代続けて教員の家系、教員養成大学を出た俺はサラブレッドかな。今は、親父に感謝している。同窓会で会った友人が次々と転職している。

    現場状況は川崎の事件と同様で、何でも個人責任の追求が最優先で精神的にまいる人が続出して最悪と聞く。教員はみんなに尊敬される職業と思っているお偉いさんはわかんねーだろうな。

    くまさん 無回答 30代
  • うじがわ says:

    「プールの水管理の仕事は、本来教員が片手間で行うのではないのではないでしょうか」、私の感想です。

    ところで、設備管理を専門にしている電気主任技術者が各学校にいるはずです。(給水の)電気ブレーカーを入れるのは低圧電気取扱安全教育を受けた人にしかできません。この教師の方は、その「労働安全衛生特別教育終了証」を持っておられた人でしょうか。

    当然、その特別教育は、事業者が充電電路のブレーカー開閉操作を行う者に受けさせるものです。この特別教育を受けさせていなかったのであれば、事業者としての市長は、労働安全衛生法違反になるのではないでしょうか。

    うじがわ 男性 70代以上
  • 匿名 says:

    川崎市教育委員会から川崎市水道局への支払いであり、川崎市から資金流出はない。水道局の費用はほとんど設備、人件費など固定費で、飲用への処理費は多少かかるのでしょうが、供給量が増えたからと言って費用はほとんどふえないのでは。つまり、実損はほとんどなく、費用請求するにしても水道代の金額というのはおかしい。

     男性 50代
  • やまだま says:

    非常勤講師をしている退職教員です。今の現場は教員同士が雑談もできないほど余裕がありません。今回のようなことも、一人の責任になりますが、互いの声かけ合いがあれば防げたかもしれない。

    そもそもこれが教員の業務なのかという問題もあります。市長は賛否両論の声があるが、市長への賛同の方が多いと述べていますが、約400件あったという意見の中で賛同がどれくらいあったかは明らかにしていません。私の印象では必ずしも賛同が多かったとは思えない。偉い人はよくこういう物言いをする。

    以前、横浜で5万筆の署名を提出したのを無視し、全く数字を明らかにせず自分たちへの賛同が多かったとか言って押しきった事案がありました。その意味でこの市長には疑問を感じます。市の施設管理のあり方と教員業務のあり方の双方を考えたいと思います。

    やまだま 男性 60代
  • ぴ- says:

    学校教育法第37条⑪ 教諭は、児童の教育をつかさどる、と教諭の本務が規定されており、学校施設の管理は校長や事務側にあると解釈されるはずです。教員の故意による違法行為があった場合以外は、施設管理の最終責任は管理職側に行き着くべきです。

    ぴ- 男性 60代
  • AAAA709 says:

    9月15日に川崎市役所前で抗議を実施することにしました。個人賠償のみならず処分まで検討しているとのこと、許せません。IRIS(愛知部活動問題レジスタンス)主催、AAAA709(Alliance Against the Application of Article 709)共催のイベント「街宣キャラバンin関東」の一環として、愛知から拡声器を持参して訴えます。

    AAAA709 その他 無回答
  • 保護者 says:

    今回は水の出しっぱなしでよかったですね、でも子供の事故なら皆さんどうされますか? 大変だから仕方ないと思われますか? 少し疑問ですね。

    保護者 男性 50代
  • 匿名 says:

    他にも指摘があったが、本件については、責任の所在と教員不足の問題を切り離して議論の成果をまとめていくのが良いのではないか。責任の所在が明確になれば(私個人の意見では、教育委員会が最も重い)、自ずと教員不足の問題に話が進んでいくと思う。あと、一連の記事の中で、小学校の校長の名前は示されているのに、「苦渋の決断」と宣っていた市教委担当者の名前が明記されていないことに違和感を覚えている。

     男性 50代

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