<わたしの糧ことば・特別編>2人の父・コピーライター、メディア戦略家 境治さん
(2017年4月16日付 東京新聞朝刊)
つながって、育てよう
これは、自分の経験と取材を通して、僕がたどり着いた子育ての解です。
息子が生後半年のころ、仕事を終えて夕方家に帰ったら、妻が薄暗い寝室で電気もつけずに赤ん坊を抱いてボーッとしていたんです。「育児に疲れて精神が不安定なのかな、支えなきゃ」と焦りながらも、僕は独立したばかりで仕事の手は抜けませんでした。
そんな中、ある日を境に妻の表情が明るくなりました。公園で子育て仲間ができたのです。「そうか、仲間が必要だったのか」と気付きました。
子どもが生まれて最初に感じたのは「核家族は子育てに向いていない」ということ。近年、自主保育や共同保育の取材をする中で、それは確信に変わりました。母親が孤独に子育てをする危うさと、つながって育てる大切さを、父にも母にも周りの人にも、もっと知ってほしいと思います。
さかい・おさむ
福岡県出身。フリーで活動。2014年、ブログ記事「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。」が反響を呼んだ。
糧ことば
人生の先輩などから言われて救われた子育てに関する言葉。共有することで、独りぼっちで悩みがちなママたちの心を少しでも軽くしたい-との願いを込め、広告会社・博報堂の「リーママプロジェクト」のメンバーが名付けた。東京新聞では2016年9月から2年間、読者から寄せられた「わたしの糧ことば」を連載。著名人による特別編も5回掲載した。