子どものアンガーマネジメントを絵本に 怒りとうまく付き合おう 新井洋行さんの「かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった」
「怒らない」ではなく「いかりのこえをきく」
「まずはそのしっぽをつかまえて、いかりがなににおこっているのか、いっしょにかんがえる。いかりのこえをきいてあげるんだ。いかりはね、きづいてもらえないことがなによりきらいなんだ」
絵本「かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった」(パイ インターナショナル、1485円)=写真=では、友達への怒りを爆発させてしまった赤い怪獣「ポポリ」に、「いかりのマスターかいじゅう『プワイズ』」がこう助言する。
作品は、感情をテーマにしたシリーズの第2弾。1作目では新井さん自身が悩んでいた「不安・怖い」という感情を取り上げた。今回選んだ「怒り」について、新井さんは「『怒らない子になろうね』と子どもは教えられるけれど、上手に怒ることの方が大事なのではないか」と考える。
「悲しい」「不快だ」 背景には複雑な感情
伝えたいのは怒りとの付き合い方、つまり「アンガーマネジメント」だ。「怒りは抱え込んだり抑え込んだりしてはいけない。でも、人にたやすくぶつけてはダメ」と新井さん。そのために、まず「ゆっくり10までかぞえる」「みずをのむ」「トイレにいく」といった気を紛らわせて怒りが収まるのを待つ方法を紹介する。絵本を監修した国立精神・神経医療研究センター(東京)の児童精神科医、岡田俊(たかし)さん(51)のアドバイスで、安心できるスペースで1人になり、「いかりをちゅうにうかべてやりすごす」対処法も加えた。
作品について、岡田さんは「『自分の中におこりんぼがいるんだ』と、いったん自分の感情を切り離して外側から見つめ、怒りの背景を見極めるという有効なアプローチを提案している」と解説。背景には「悲しい」「焦っている」「不快だ」といった複雑な感情があるが、「言語化する力が未成熟な子どもは、どんな気持ちが、なぜ生じているか分からないまま怒っていることが多い」と指摘する。
50体の怪獣 理由を見つめるきっかけに
絵本では見開きのページに50体の怪獣が描かれ、それぞれに怒りの理由が短い言葉で添えられている。「なかまはずれにされた」「ずるをされた」「しんじてくれない」…。中には「あつすぎる」「おなかがすきすぎた」「ふくがちくちくする」のように、体の状態や感覚と深く結びついた理由も並ぶ。
「50体の怪獣は、いわば『怒りのカタログ』。言語化は難しくても、この中から『これかも』と怒りの理由を見つめるのに役立つ」と岡田さん。「怒りの根本にある感情とその理由に気付いて言葉にし、相手に伝えてこそ根本的な解決につながり、良い人間関係を継続できる。これは子どもであっても可能だ」
国立成育医療研究センター(同)によると、コロナ禍では子どものストレス反応として「すぐにイライラしたり、感情を爆発させたり、激しいかんしゃくを起こしたりする」という保護者の回答が目立った。学校現場でも、いじめやいざこざへの対策として、スクールカウンセラーの提案でアンガーマネジメントの教材を使った授業などを行う動きが広がっている。
新井さんは「自分の持っている負の感情はなかなか人に話せないもの。絵本を子どもと感情について話し合うきっかけにしてほしい」と願う。