子どものアンガーマネジメントを絵本に 怒りとうまく付き合おう 新井洋行さんの「かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった」

(2023年8月23日付 東京新聞朝刊)
 
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「怒りの感情とうまく付き合ってほしい」と話す作者の新井洋行さん=神奈川県藤沢市で

 「怒っちゃダメ」「怒ることじゃないでしょう?」。家庭でも学校や園でも、子どもたちは「怒り」を抑えるように言われることが多い。でも、怒りを抑え込むだけでは実は何も解決しないのでは? そんな疑問から、絵本作家の新井洋行さん(48)は怒りをテーマにした新作を刊行。「怒りは悪い感情じゃない。うまく付き合うことが、自分を知り、周りと良い関係を築くことにつながる」と話す。

「怒らない」ではなく「いかりのこえをきく」

 「まずはそのしっぽをつかまえて、いかりがなににおこっているのか、いっしょにかんがえる。いかりのこえをきいてあげるんだ。いかりはね、きづいてもらえないことがなによりきらいなんだ」

 絵本「かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった」(パイ インターナショナル、1485円)=写真=では、友達への怒りを爆発させてしまった赤い怪獣「ポポリ」に、「いかりのマスターかいじゅう『プワイズ』」がこう助言する。

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新井洋行さんの絵本「かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった」(パイ インターナショナル)

 作品は、感情をテーマにしたシリーズの第2弾。1作目では新井さん自身が悩んでいた「不安・怖い」という感情を取り上げた。今回選んだ「怒り」について、新井さんは「『怒らない子になろうね』と子どもは教えられるけれど、上手に怒ることの方が大事なのではないか」と考える。

「悲しい」「不快だ」 背景には複雑な感情

 伝えたいのは怒りとの付き合い方、つまり「アンガーマネジメント」だ。「怒りは抱え込んだり抑え込んだりしてはいけない。でも、人にたやすくぶつけてはダメ」と新井さん。そのために、まず「ゆっくり10までかぞえる」「みずをのむ」「トイレにいく」といった気を紛らわせて怒りが収まるのを待つ方法を紹介する。絵本を監修した国立精神・神経医療研究センター(東京)の児童精神科医、岡田俊(たかし)さん(51)のアドバイスで、安心できるスペースで1人になり、「いかりをちゅうにうかべてやりすごす」対処法も加えた。

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「怒りは誰にとっても大切な感情の一つ」と話す児童精神科医の岡田俊さん=東京都小平市の国立精神・神経医療研究センターで

 作品について、岡田さんは「『自分の中におこりんぼがいるんだ』と、いったん自分の感情を切り離して外側から見つめ、怒りの背景を見極めるという有効なアプローチを提案している」と解説。背景には「悲しい」「焦っている」「不快だ」といった複雑な感情があるが、「言語化する力が未成熟な子どもは、どんな気持ちが、なぜ生じているか分からないまま怒っていることが多い」と指摘する。

50体の怪獣 理由を見つめるきっかけに

 絵本では見開きのページに50体の怪獣が描かれ、それぞれに怒りの理由が短い言葉で添えられている。「なかまはずれにされた」「ずるをされた」「しんじてくれない」…。中には「あつすぎる」「おなかがすきすぎた」「ふくがちくちくする」のように、体の状態や感覚と深く結びついた理由も並ぶ。

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怪獣の絵に「怒りの理由」を添えたページの一部=「かいじゅうポポリはこうやっていかりをのりきった」から

 「50体の怪獣は、いわば『怒りのカタログ』。言語化は難しくても、この中から『これかも』と怒りの理由を見つめるのに役立つ」と岡田さん。「怒りの根本にある感情とその理由に気付いて言葉にし、相手に伝えてこそ根本的な解決につながり、良い人間関係を継続できる。これは子どもであっても可能だ」

 国立成育医療研究センター(同)によると、コロナ禍では子どものストレス反応として「すぐにイライラしたり、感情を爆発させたり、激しいかんしゃくを起こしたりする」という保護者の回答が目立った。学校現場でも、いじめやいざこざへの対策として、スクールカウンセラーの提案でアンガーマネジメントの教材を使った授業などを行う動きが広がっている。

 新井さんは「自分の持っている負の感情はなかなか人に話せないもの。絵本を子どもと感情について話し合うきっかけにしてほしい」と願う。

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