絵本は今アジアが熱い! 韓国と日本に注目「ブラチスラバ世界絵本原画展」 現代的なテーマで大人も魅了

出田阿生 (2023年8月13日付 東京新聞朝刊)
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イ・ソヨン《夏》2019-20年 ©LEE Soyung

うらわ美術館で8月31日まで

 今、絵本は「アジアが熱い」という。絵がついた哲学書にすら思える作品が並び、子ども向けという思い込みが消える-。なかでも最近活躍が目覚ましい韓国と、伝統的な「絵本大国」の日本に注目した「ブラチスラバ世界絵本原画展 アンニョン!絵本でひらくアジアの扉」が31日までうらわ美術館(さいたま市浦和区)で開かれている。日韓の特色や、豊かな創作を堪能できる展示となっている。

韓国の代表作「はしれ、トト!」

 「ブラチスラバ世界絵本原画展」はスロバキア共和国の首都で2年ごとに開催される絵本原画のコンクールで、選ばれた各国代表が参加する。

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アーティストが出版社を介さず読者に作品を届ける韓国のプロジェクトでつくられた絵本たち=さいたま市のうらわ美術館で

 中でもエネルギーにあふれる韓国を知らしめたのが、2011年にグランプリを受賞したチョ・ウンヨンさん作「はしれ、トト!」。子どもの目から競馬場を描いた絵本で、馬の鼻息が聞こえてきそうな大迫力。この年は同じく韓国のユ・ジュヨンさん作「ある日」が金のりんご賞(第二席)も受賞する快挙となった。

学芸員が韓国の社会的背景を取材

 それ以外の展示作品も個性豊かだ。作家が街で見かけた千人以上の人々をスケッチした作品(イ・ミョンエさん作「明日は晴れるでしょう」)は、人々が支え合う連帯感を感じさせる。夏の暑さを「小さな赤い生き物」で表現した作品(イ・ソヨンさん作「夏」)は、ユーモアに頰が緩む。生き物に害をもたらす海洋プラスチックの話など、環境問題に鋭く切り込む絵本も目立つ。

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本棚に受賞作の絵本が並ぶ会場風景

 前田伽南(かな)学芸員は「韓国で絵本の出版が盛んになったのは1988年のソウル五輪以降。デジタル技術を駆使して現代的なテーマに挑む若い作家が多く、出版社や書店などが新しい才能を発掘しようとしている」と解説する。学芸員らが実際に韓国を訪れて取材したパネル展示もあり、社会的背景が分かる。

実物の絵本を手に取って読めます

 一方、アナログの手法で制作する作家が多い日本のコーナーでは、原画ならではの筆の勢いや精緻さを味わえる。韓国とは対照的に、日本はブラチスラバに1967年の初回から参加するほど絵本出版が盛ん。田島征三さんやきくちちきさん、ミロコマチコさんら、著名作家の作品が展示される。

 目を引くのは2021年に「金牌(きんぱい)」賞に輝いた、しおたにまみこさんの「たまごのはなし」。主人公は擬人化された卵で、ふざけているような真面目なような、シュールな表情がたまらない。

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しおたにまみこ《たまごのはなし》(部分)2020年(BIB 2021金牌)

 会場では原画とともに絵本の実物を手に取って読むこともできる。午前10時~午後5時、月曜休館。一般620円、高校・大学生410円、中学生以下無料。問い合わせはうらわ美術館=電話048(827)3215。

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絵本の実物が置いてあり、箱や装丁も手に取って確かめられる

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年8月13日

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