保育園でトイレに園児閉じ込め 足立区の認可施設 同僚保育士が「虐待」訴え発覚、区が改善指導
東京都足立区の認可保育施設で、ともに50代女性の園長と主任保育士が、複数の園児に対し、トイレに閉じ込めたり、不適切な言葉をかけるなど、「虐待」が疑われる不適切な保育を繰り返していたことが分かった。同僚の保育士4人が施設の運営会社と区に訴え、判明した。園長と主任保育士の2人は10月末で退職し、運営会社は大筋で事実関係を認め、今月9日に保護者説明会を開いて謝罪した。
泣き叫ぶ園児を… 事務室に鍵かけて閉じ込めも
この施設は、首都圏を中心に病院内保育施設の運営や保育士の人材派遣などを行う株式会社「明日香」(横浜市)が運営。ゼロ~2歳児向けの区が認可する施設で、定員は15人。
保育士らは10月上旬、園長と主任保育士が主に1、2歳児を虐待し、保育士に対しても保護者や園児の前で叱責(しっせき)するなどのパワハラがあったとして、運営会社に訴え、改善を求めた。
訴えによると、園長らは「いやー、いやー」と泣き叫ぶ園児をトイレに連れて行ったり、トイレに1人で放置したり、泣きやまない子を「うるさい」と言って、事務室に鍵をかけて閉じ込めたりした。午睡時に寝付けなかったり、早く目覚めたりした園児にはベッドでじっと横になるよう強制したという。「介護・保育ユニオン」(世田谷区)として会社側に団体交渉を申し入れた。
「常態化で感覚がマヒし、エスカレート」と謝罪
会社側は、園長ら2人を訴えのあった日の翌出勤日から出勤停止にし、調査。保育の専門家を交えた第三者委員会を設置し、改善に動いているという。12月にも新園長を置く。保護者説明会で「虐待と取られても仕方のない行為があった」「誤った接し方・不適切な言葉かけが行われてしまった。常態化していく中で、感覚がマヒしエスカレートしていった」として謝罪した。
施設の認可や指導監督権限のある足立区も、閉じ込めや強い叱責などの不適切な言葉がけなどを確認。今月1日付で運営会社に対し、改善を指導した。昨年、保育士から会社側に訴えがあったにもかかわらず、改善の対応がなされなかったとして、本社の関わり方や指導の改善も求めた。
足立区「認可施設で、保護者の信頼を失う結果に」
足立区は昨年度はほぼ毎月、巡回訪問し、今年6月には法令に基づく指導検査をしていたが、虐待については把握していなかった。園長らが出勤停止になった日から毎日、保育士を派遣し、支援や指導をしているという。
足立区子ども施設入園課の安部嘉昭課長は「区の認可施設で虐待ととらえられても仕方のない不適切な保育が行われており、保護者の信頼を失う結果となり、重く受け止めている。今後は保育内容の確認や助言などの支援を行い、再発防止に取り組みたい」と話した。