9月入学に賛否両論 「欧米に留学しやすくなる」「保育や教育現場に大きな負担」
×「需要急増で保育士が不足」 ○「グローバル化のチャンス」
「一時的に保育の需要が急増し、保育士不足が加速する」。東京・永田町の自民党本部で20日に開かれた「秋季入学制度検討ワーキングチーム」(柴山昌彦座長)の第4回役員会。日本保育協会の大谷泰夫理事長が「現場が対応しきれるか心配している。未就学児童への影響にも配慮してほしい」と意見を伝えた。
日本PTA全国協議会の佐藤秀行会長も「賛否両論ある。慎重に協議を進めてほしい」と求めた。
一方で、大学や小学校教員から柴山座長に寄せられたという賛成意見も紹介された。「日本が真のグローバル化を果たすことのできる、大きな可能性を秘めたチャンス」「子どものために楽しい学校生活を戻す」などとしている。
1886年から4月入学を奨励 東大は2012年に検討したが見送り
9月入学は、安倍晋三首相が4月29日、「前広に検討」と話し、萩生田光一文部科学相も「大きな選択肢の一つ」としており、経済界からは期待の声が上がる。政府は6月上旬にも一定の方針を示す考えだ。
秋季入学は1984~1987年、臨時教育審議会(臨教審)で検討された。全14章、190ページ以上の「秋季入学に関する研究調査」(1986年12月)によると、明治当初、小学校は随意入学だったが、1886年、会計年度を4月に改めたことなどで4月入学が奨励されるようになった。洋式教育が導入されて9月入学だった大学も大正期に4月入学に移行した経緯がある。
「研究調査」は、秋入学への移行の経費を最大約1兆8000億円と試算していた。
その後も大学審議会などで大学の秋入学が議論されたが、実質的な検討には至らなかった。東大は2012年、秋入学を検討する組織を発足させたが、春の卒業を前提とした公務員試験や資格試験の時期とずれる問題などが解決せずに導入を見送った。
待機児童は26万人超、教員は2万8000人不足 支出は2兆円以上
9月入学を導入した場合、教育や保育の現場は大きな影響を受ける。英オックスフォード大の苅谷剛彦教授らの研究チームは19日、報告書を発表。来年度の新小学1年生を、2014年4月2日から17カ月間に生まれた児童とする場合、一部の児童が保育所に5カ月長くいることになり、全国で約26万5000人の待機児童が発生すると推計した。
また、来年9月に入学する新小学1年生は、例年より約42万人増えて1.4倍になり、教員が約2万8000人不足。これによって約2600億円の支出が必要となり、この学年の義務教育終了までに総額2兆円以上の支出増が見込まれると試算している。
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