〈パリ特派員の子育て通信〉プーがやって来た! 厄介な「隣人」に対策アレコレ

竹田佳彦 (2018年12月4日付 東京新聞朝刊)

 2017年9月からフランスに駐在する東京新聞パリ支局の竹田佳彦記者(40)が、現地の子育てについてつづります。随時掲載。

幼稚園に掲示された「シラミ注意」の張り紙=パリ市内で

 11月初旬、ついに幼稚園の掲示板に「プーがやってきた」と張り出されました。かわいい名前ですが、「Poux(プー)」とはシラミのこと。10月に入ると、隣の園でも感染が見つかったと聞きましたが、娘の園では話題になっていませんでした。

 張り紙にはシラミの絵まで描かれていて、「お子さんの頭をチェックしてください」と呼び掛けています。先生に聞くと「予防のための注意喚起です」とのことでした。

 街中の薬局では、9月に新学期が始まると店内にシラミ対策コーナーが目立つようになります。レジ前の目立つところに、予防用や駆除用の薬品が何種類も。わが家はラベンダー精油入りの予防用スプレーを買いました。

 シラミは、後頭部や耳の後ろに付きやすいそうで、娘は毎朝、登園前にひと吹きして出掛けるようにしました。幼稚園のお昼寝のベッドが他の子と入れ替わることもあるし、頭を突き合わせて遊ぶこともあります。誰か1人がシラミを持ち込むと、一気に広がりかねません。

 もしかかってしまったら、卵から順次ふ化するシラミを駆除するため、しばらくの間は専用シャンプーで髪を洗い、金属製の専用くしで髪の毛をとかして本体や卵まですき取ります。同じく学校でのシラミが問題になっているドイツ在住の友人によると、髪の毛をすく時は目が細かい金属製の専用くしを使うことが大切で、プラスチック製では十分に取れないのだとか。

 加えて、ベッドのシーツや枕カバー、服も洗剤を使ってお湯でしっかりと洗います。いつも抱っこしているぬいぐるみも、洗濯と消毒が欠かせません。フランス人の知人からは「ぬいぐるみは袋に入れて冷凍庫に一晩入れるのも効果的よ」とのアドバイスをもらいましたが、食べ物がいっぱい入っている冷凍庫…。袋に入れたとしても、ちょっと遠慮したい生活の知恵です。

 9月にインターネット上の大手薬局が実施した調査によると、フランスでは保護者の48%がシラミの脅威を感じているそうです。子どもの頭皮のチェックやラベンダー精油など予防薬の利用、友達の服や帽子を借りない-などの予防をしているのは73%で、変わったところでは、タマネギの搾り汁を頭に振りかけるという方法もありました。涙ぐましい努力にもかかわらず、61%の子どもが1度はシラミを抱えることになるとのこと。フランスに暮らしている間は、付き合わなければならない隣人というところでしょうか。娘は今朝も、髪の毛からラベンダーの香りを漂わせながら幼稚園に向かいました。

 ちなみに、日本でも人気があるA・A・ミルンの児童書「クマのプーさん」は、フランス語で「ウィニー・ルルソン(クマのウィニー)」と言います。わが家にもぬいぐるみがありますが、どこにも「プー」はいなくて安心です。