大津事故で都内の保育園も苦悩 園庭ある新設認可園2割だけ 外遊びの安全どう確保?

中村真暁、小林由比、梅野光春 (2019年5月11日付 東京新聞朝刊)
 大津市で散歩中の保育園児と保育士の列に車が突っ込み、園児2人が死亡した事故を受け、首都圏各地の保育園は園外活動の安全確保に気をもんでいる。待機児童問題が深刻な都市部では、園庭のない保育園が増加。関係者は「外遊びは必須。安全対策を重ねて散歩させたい」と頭を悩ませている。 
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保育園児らが死傷した大津市の事故現場。10日も手を合わせる人が相次いだ

四季を感じ自然に触れる 散歩は不可欠

 78カ所の認可保育園のうち6割に園庭がない東京都文京区。その一つで働く保育士は「事故を受け、全職員で散歩での注意点を見直している」と話す。

 他の職員からは「信号待ちでは車道から離れるべきだ」と意見が出た。だがこの保育士は「歩くスピードが遅い子どもが青信号で渡り切るには離れすぎもよくない」と考える。こうした判断の難しさから「運転する人には気を付けてほしい」とあらためて願う。

 荒川区の園庭のない保育園の女性園長は「同じ場面に出くわしたら、仕事を続けられるだろうか」と声を落とす。四季を感じ、自然と触れ合う大切さから、毎日の散歩は欠かせない。散歩中は普段から保育士同士で声を掛け合うが「事故に遭った保育士も注意していた。命を守ることはすごく難しい」と実感している。

8割が「公園の活用を前提に開設」

 都によると、2017年度に新設された都内の認可保育園約270カ所のうち、基準通りに園庭を備えた園は2割にとどまる。残りの8割は「公園の活用を前提に開設している」と都の担当者は話す。

 社会福祉法人信和会(中央区)が都内で運営する2つの保育園にも園庭がない。園内のホールで体操などをするが、外出は欠かせない。同法人の中田純子理事は「待機児童対策に追われる中、都心部では、すべての園に園庭を造るのは難しい。これからも、園外で子どもたちが安全に遊べるようにしたい」と話した。

交通ルールも学べる、社会との接点

 一方、園庭のある保育園でも、散歩時の安全を再点検している。横浜市中心部にある認可保育園では、大津市の事故翌日の9日に職員会議を開き、ガードレールのない散歩コースの変更を検討。保育士は「事故を受けて10日まで散歩は中止し、園庭遊びだけ。週明けから、安全確認できたコースで再開する」と話した。

 東京都大田区の認可保育園の園長は「事故当日から職員同士で危険箇所を出し合ったほか、警察署にもアドバイスを頼んでいる」と説明。「園外活動は交通ルールなどを学ぶ社会との接点。園庭があっても欠かせない」と力を込めた。

厚労省が注意喚起

 大津市で保育園児2人が亡くなった交通事故を受け、厚生労働省は10日、全国の認可保育園などに、散歩時の安全確保を呼び掛ける事務連絡を、都道府県を通じて出した。

 厚労省によると、大津市の事故では保育園側に問題はないと考えられるため、これまで各園で実施してきた危険箇所や交通量チェックを再度徹底するよう要請。その上で、子どもの発育に重要な園外活動は今後も積極的に取り入れるよう求めている。担当者は「危ないから園外に出てはだめ、という考えはよくない」と話した。 

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