創刊30年目の「お母さん業界新聞」 創業の地・横浜の地域版をスタート 地元の情報をもっと
志村彰太 (2019年11月29日付 東京新聞朝刊)
子育て情報を届け、母親たちの悩みを共有する場になっている月刊紙「お母さん業界新聞」が、創刊30年目にして創業の地・横浜の地域版の発行を始めた。もともと横浜が拠点だっただけに、横浜版をつくることを想定していなかったが、全国に読者が広がったことで「横浜の情報が少なくなってきた」と、発刊を決めた。
購読者の植地さんが編集長に
横浜版は10月に創刊し、全国版と同じタブロイド判8ページ(全色刷り)で、毎月1日に5万部発行する。半分は全国版と共通で、読者兼記者の「お母さん記者」によるコラムと、発行会社の活動報告などを掲載。残り半分に、横浜の地域情報や、母親に子育ての工夫や悩みなどを聞いた記事を載せている。
横浜版編集長の植地宏美さん(43)=横浜市磯子区=は、2012年から同新聞を購読している。3人目の子どもを出産した後、「子育てに慣れて、あれこれ考える余裕ができた半面、これでいいのかとか悩むことも増えた」時期だったという。そんなとき同新聞を知って読むようになり「同じ悩みを共有できた」と振り返る。
交通事故で夫を亡くし、社会からも孤立
購読開始から間もなく、夫=当時(42)=を交通事故で亡くした。一人で子育てと仕事を両立させるのは難しく、15年に勤めていた横浜税関を退職。社会からの孤立を感じるようになり、居場所を求めて、同新聞に折り込んで配る「磯子版」を自ら創設して執筆・発行を始めた。
同新聞の発行会社は植地さんの活動を評価していて、横浜版の発行が決まると編集長に抜てきした。10月号は「お母さんこそ、銭湯のコミュニティーが必要」と横浜の銭湯特集を、11月号は剣道に打ち込む母親のインタビューを掲載した。
各区にお母さん記者配置が目標
現在、横浜版の「お母さん記者」は20人いるが、記者がいない区もある。植地さんは「各区にお母さん記者がいるようにしたい。目標は48人」と意気込む。
横浜版の発行費は企業などの協賛金で賄い、横浜市内の地区センターや図書館などの公共施設や、発行会社のイベントなどで無料配布している。詳細は「お母さん業界新聞」のホームページで。