〈えほん〉「しかくいまち」作・戸森しるこ 絵・吉田尚令
長壁綾子 (2021年2月26日付 東京新聞朝刊)
しかくいまちで暮らす「かくさん」には口がない。この町には、文字や感情もない。だから、穏やかでとても平和だ。
ある日、かくさんが川沿いの道を歩いていると、1人の男の子が流れてきた。かくさんが男の子を助けると「きみはだれ? どうしてここにいるの?」と尋ねられるが、理解できない。数日間を2人で一緒に過ごすうちに、気持ちを持たないかくさんにも感情が芽生えてきて。
まったく違う相手と触れ合うことで新しい世界が広がる。互いを理解することで生まれた友情を静かに描く。
1540円。理論社=電話03(6264)8890。