JR16駅でベビーカーレンタル開始 スマホで簡単、最大7日間 グループ社員が妻の苦労から提案
事前に予約、深夜・早朝も返却可
JR新宿駅では、南改札近くに無人のベビーカースタンドを置いた。専用サイトで事前予約を済ませた人が、スマートフォンでQRコードをかざすと、ロックが外れる。使った後は、借りたスタンドに戻す。深夜、早朝でも返却できる。
ベビカルは東京、横浜、舞浜など首都圏の主要駅にそれぞれ3~5台を置く。利用料は最初の1時間が250円で、以降は30分ごとに100円。登録したクレジットカードで決済する。
ベビカルは、新事業の社内公募から生まれた。JR東グループ社員のアイデアが採用された。JR東事業創造本部新事業・地域活性化部門菊池康孝副課長は「全国展開を進め、今後1年間で40カ所ほどに拠点を広げていきたい」と話した。
外出控えの原因になっている現状
「なんで駅にベビーカーのレンタルがないの」。2018年秋、JR東のグループ会社に勤める森祐介さん(42)は妻(39)に言われ、はっとした。2人の息子はすでにベビーカーは卒業していたが、妻は外出時の苦労を忘れていなかった。
自宅から最寄り駅まで自転車なら10分なのに、ベビーカーがあるためバスで移動。駅ではエレベーターを探し回り、電車内では乗客の視線が気になり、後ろめたい。「目的地の駅で借りて返せれば楽なのに」。妻の言葉で森さんはベビカルを思いつき、JR東日本がグループ社員に募った新事業のアイデアとして応募した。
1000件超の応募の中、森さんのアイデアは社内審査を突破。東京駅などでの実証実験も好評で、実験を知った夫婦から「応援しています。事業化してください」と声もかけられた。
森さんは「乗り換えが大変、電車内で気まずいなどの負担感から外出を控える人もいる。そんな負担を軽減し、子育て世代が気軽に外出できる社会になってほしい」と願う。
鉄道での利用「ベビーカー論争」に
一方で、鉄道でのベビーカー利用をよく思わない人もいる。「ベビーカー論争」という言葉も生まれた。
国土交通省は13年、有識者や鉄道事業者などによる協議会を設置し、公共交通機関でのベビーカーの利用について一定の見解を示している。「電車内でベビーカーは折りたたまなくていい」ことを呼び掛け、ベビーカーを利用できる場所を示すマークを作った。
そうした啓発活動にもかかわらず、今もSNSでは「ベビーカー様」など利用者を皮肉る投稿が後をたたない。協議会メンバーで宇都宮大学の大森宣暁教授(都市交通計画)は「子育てに対する理解や心のバリアフリーを広めることが最も大切だ」と言う。その上で「ベビーカー利用者への非難は混雑時に起こりやすい。ベビカルは混雑時に乗車しなければならない子育て世代にとって非常に助かる仕組みだ」と評価した。
貸し出す16駅
■東京都:東京、新宿、池袋、新木場、葛西臨海公園、※立川、国分寺、府中本町(※東京と立川は2カ所)
■神奈川県:横浜、川崎
■千葉県:舞浜、新浦安
■埼玉県:浦和、さいたま新都心、戸田公園
■群馬県:高崎