鈴木貴子衆院議員 トイレの「ベビーキープ」問題は見過ごせない!〈ママパパ議連 本音で話しちゃう〉第10回 

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 リレーコラムのバトンを受け取りました、衆院議員の鈴木貴子です。前回の西村さんからこんな質問を頂きました。「最近お2人目を出産されたばかりで大変な毎日かと思います。朝早かったり夜遅かったりする日も多いと思いますが、どんなふうに生活をまわしてらっしゃいますか」。お答えします。


〈前回はこちら〉西村智奈美衆院議員 新潟と往復、議員宿舎で寝かしつけ…綱渡りの「深夜国会」


 我が家には2歳の長女と昨年10月に生まれた0歳の次女がいます。今は新型コロナウイルス感染拡大を受け、もろもろ自粛中ですが、平時の状況をお話しすると、日中はどうしても一緒にいられないので、保育園の送り迎えはできる限り私が行くようにしています。

 自民党は朝8時から部会がありますが、これに間に合うように保育園に預けるのは難しいので、そこはある種割り切っています。絶対に出たいときは、夫を含めて家族総出で対応してもらいます。兄家族にはこの春、小3と中1になった男の子たちもいて、遊び相手としてフル活用。フリーランスのカメラマンをしている夫にもだいぶ調整をしてもらっています。本当はもっと働きたいだろうし、遠くの仕事もしたいだろうけど、そこをセーブしてもらっているような状況です。

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 私の場合は週末、基本的に選挙区の北海道に帰るので、その間子どもたちは夫や両親にお願いしています。ただ国会が閉じて、地元の行事やイベントを回るときには連れて帰ります。去年は2歳の長女を連れて地元の夏祭りに出たり農家をまわったりしました。長女はまったく臆することなく牛をさわりにいくんです。私が話を聞いているときも、後ろに立って腕を組んで話を聞いたり、会合でも周りが拍手をしたら合わせて拍手をしたり。子どもってやっぱり特殊能力があるなあと。国会議員要覧をぱらぱらめくって私の写真も見つけてくれますよ。そんなときはつながってる感がしてすごく幸せ。2018年10月から昨年9月まで務めた防衛政務官時代には、国会で答弁している姿をテレビで見て「おかーたん」って指をさしてくれていたようです。

 女性の防衛政務官は私が初めてでした。しかもママ、かつ妊娠もしました。政務官の立場だと、緊急時には夜中でも携帯がなります。だから家族にはその時は子どもをお願いね、と頼んでいました。両親や兄家族にも寝る時は電話を枕元に置いてもらったり協力してもらいました。こういう身近に頼れる家族がいたがゆえに、まわせているんだと思います。

 ただ政治家って個人商店ですからね。やるときはやらなきゃいけない。出席すべき夜会合があれば夫が保育園のお迎えをします。そこも工夫で、例えば、なるべく開始時間を早めにしてもらったり、事前に「2次会、3次会にひっぱらないで2時間思いっきり議論しましょう」と呼びかけたり。子どもがいないときは夜もがんがん予定を入れていたけれど、さすがにそこは極力セーブするようになりました。

 せっかくだから、今日はこの話をしたかったんです。名付けて「ベビーキープ遠くない?」問題。子ども連れでも使える多目的トイレでこんな経験ありませんか。「ベビーキープ」(自分が用を足す間に子どもを座らせておく椅子)が便座から離れすぎていて、座らせられない。私が遭遇したのは扉の横に設置されたベビーキープ。つまり便座から一番離れた場所にあったんです。「目を離さぬように」「お子さんから離れぬように」とあるのだけど、どうやって離れないでトイレに座るの?という矛盾。おそらく、多目的トイレは、障害のある方、高齢者の方、子連れの方…って誰でも使えるようにしたことで、誰にとっても中途半端で優しくないトイレになってしまったんじゃないかなと。

 この話を自民党の国土交通部会で説明したんです。便座から離れた位置に設置されたベビーキープは見直すべきで、安全のためにもガイドラインを設けるべきでは、と提言しました。そしたら「ああ~そういうもんなんだ、言われたらそうだよね」という雰囲気。役所も「これまで言われたことなかった」といった様子。でもこれってママの「あるある」じゃないですか。調べてみたら、東京五輪で使う新国立競技場でも同じ問題を抱える多目的トイレが。国がお金を投じて、ある意味トイレが売りだといってお披露目したのに、誰にとってもすごく中途半端なトイレなんです。担当省庁に聞くと、車いすを使って、なおかつ子どもをベビーキープに座らせたい方にはある程度スペースを確保する必要がある、と。すると「でも車いすを使っているママにとってベビーキープの高さはこれでいいの?子どもを抱え上げられるの?」という新たな疑問がわいてきます。

 その後、ベビーキープを早くから手掛けている子ども用品のコンビさんに話を聞き、30年ほど前の第1号は和式用だったことを知りました。面白いですよね。和式で用を足すときに抱っこしたままではきついということで、元々は低い場所にあった。洋式化して高くなったんです。設置基準をみると、人や扉にぶつからないように何センチ以上離れましょう、という設定の仕方になっている。だから逆に「便座から遠い問題」がクリアされてしまう。設置のガイドラインのなかに「親の手の届く範囲」というのをいれるだけでだいぶ変わってくるんじゃないかと思うんです。

 でも、これって何で誰も言わなかったのだろう?と。たぶん今までそれぞれの立場の方が子どもの安全のために頑張ってくれていて、みんなの思いがあるにも関わらず、利用者の目線になっていなかった。それは意思決定の場、もしくは社会の場において女性が少なかったことの証左だと思う。女性が少ないこと自体が問題なんじゃなくて、その目線が生かされていないことが問題なのかなと。

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 だから自民党も、積極的に女性候補者擁立、育成に力をいれているけれど、いないことによってこんな不条理がある、とか、逆に女性議員が加わったことでこんなに変わったよ、ということをもっと発信していけば、おのずと社会って変わっていくんじゃないかと思うんです。男性側もそれならすんなりと受け入れてくれると思う。単純に数の問題じゃなくて質の問題ですよと。豊かさの問題につながっていくよ、ということをピンポイントで示していきたい。この「トイレ改革」の話は、こうした例の一つになると思います。

 トイレの問題にとどまらず、赤ちゃんを連れて行動をしていると、ちょっとしたことで「ああ、子どもに優しくない」と感じることありますよね。近所に息抜きでお茶飲みに行くにも入り口に階段があって、重い扉で。自販機の飲み物を公園で飲むしかないのかな、となってしまう。世の中に拒絶されてる感。実際はそうじゃないのにそう思ってしまう。お店の中でお茶を飲んでいる人たちがすごくうらやましくて。そういう世の中の不条理、階段の段差もそうだし、横断歩道を渡った後、歩道に上がるときの盛り上がった部分…あれ、ベビーカーがつっかかりやすいんですよね、なんであそこに勾配をつけられないのかと。車いすの人にとってもすごくやりにくいはず。そういう不条理に対して、ちょっとした優しさ、ちょっとした思いやり、おもんぱかる気持ちがあれば、世の中をがらっと変えると思うんですよ。

 自分が妊娠して子育てをしているからこそ、気づけた話がたくさんあります。だからこそ国会議員として、自戒の念を込めて、女性だから子育ての問題に関わるのはどストレートすぎるって逃げるんじゃなくて、こういった問題に取り組むべきじゃないかと思うようになりました。新型コロナウイルス感染拡大を受けて、母子手帳の郵送による交付や、産後の出生届などの諸手続きの郵送化、乳児のいる家庭への訪問型事業のオンライン化などの必要性を感じ、それらをぜひ推奨、周知徹底してもらうよう地元自治体に提言しました。その後、政府からも、それらを勧奨する旨の連絡が全国の自治体に発出されました。

 私も元々外交だ、安全保障だと堅い分野をやってきた節はあるけれど、国会議員は人生の経験のあらゆることを仕事に変えていかなくてはいけないという使命があるなと。そういうのを公人というのは、さらさなくてもいいけど生かすことは必要なんだなと痛切に感じています。

 では、次を担当される参議院議員の福島みずほさんへの質問です。「男性の家事・育児参加はどうしたら進むと思われますか?」。私は最近、学校の家庭科の時間をもっと増やしません?と取り組んでいます。料理とかアイロンとかボタン付けとか。男女問わずたっぷりやれば、家事育児が性別役割分業にならない。とあるデータで、女の人が1人目の妊娠時に悩むのが自分の仕事、2人目をどうするかで悩むのが、パートナーがいかほど子育て協力をしてくれるかということなんですって。パートナーが協力してくれると思えば妊娠に踏み切れるけど、そこに自信がないと2人目はやはり持たないと。少子化対策としても男性の家事・育児参加は重要だと思うのです。

鈴木貴子(すずき・たかこ)

 比例代表北海道選挙区、3期、自民党。1986年1月北海道帯広市生まれ。2008年カナダ・オンタリオ州トレント大学(専攻:国際政治経済学、社会学)卒業後、2009年NHK入局。2013年6月に衆院初当選。前防衛大臣政務官(第4次安倍改造内閣)。現在は自民党副幹事長など。

(構成・坂田奈央)

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