橋本聖子参院議員(前編) 現職の出産は50年ぶり2人目 働き方を模索した28年〈ママパパ議連 本音で話しちゃう!〉

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少子化が問題のはずが、政治の世界は…

 今回のリレーコラムを担当する参院議員の橋本聖子です。

 さて、前回のコラムを担当された高木美智代さんからは「橋本さんといえば、子育て国会議員の先駆者。仕事と子育ての両立のご苦労など涙と笑いのエピソードを」とのご質問を頂きました。そうですね、振り返れば、国会議員の立場で2000年に妊娠を公表し、出産してから22年経ちました。現職国会議員の出産は50年ぶりで2人目のことだったそうです。永田町では今も、国会議員の仕事と子育ての両立への理解度がまだまだ低いと思いますが、22年前はそれ以上でした。当時、国会ではすでに、いわゆる少子高齢化がこの国の課題として挙がっていて、少子化に歯止めをかけよう、少子化対策に取り組んでいこう、と言われ始めてから、10年以上経っていたと思います。ところが、いざ自分が妊娠・出産となった時には反対の人もいたりして、そのギャップの大きさに驚いたのを覚えています。

 もともと国会議員は私にとって身近な存在でした。私が中学生のとき、姉が国会議員と結婚しまして、その義理の兄が、演説などで少子化対策が重要なんだという訴えをしている姿を見ていました。そして、社会人になってから富士急行のスケート部に入部し、練習の合間にいわゆる普通にOLの経験もさせてもらったんですが、その富士急行の会長が当時衆院議員の故堀内光夫先生だったんですね。なので、やっぱりそういった政策に触れる機会が多くて、20歳を過ぎてからはずっと、義理の兄と堀内会長の選挙の演説で、スケート選手として前座をやっていました。それが政治の世界に入るきっかけにもなりました。

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 少子化対策や子育て支援というのは、当時から多くの議員が訴えていて、演説を聞きながら、こういう時代なんだなあって思いながら見ていました。政治がそう言ってくれて、社会に対して一生懸命働きかけをしているのなら、実際に対策が進んでいるんだろうと思っていました。当時の私にとって子育てはいつか自分が通る道の話で、政治はきっと素晴らしい仕事だと思っていました。それだけに、その後、30歳になってこの世界に入ったときに、「意外に社会とずれてる…」って驚きましたね。

 まずはオリンピックの選手がなんで国会議員出るんだっていうバッシングがすごかったのと、やっぱり女が何だっていうのがありました。出馬を決めた28年前のことです。自民党に入党しましたが、ほとんど若い子がいない。年の近い女性の先輩は野田聖子さんなどほんのひと握りでした。あとは子育てが全て終わってから政治家になられるとか、そういう方が多い時代だったので、若い女性が来る場ではないという雰囲気がありました。特に参議院は、40歳とか50歳になってから議員になる人の方が多いような状況でした。昔の貴族院という雰囲気がまだあって、知事をされてから参院議員になるとか、そういった大ベテランがいる場に、30歳になったばっかりの私がぽつんといる状態でしたね。そして、そういう特別な社会に踏み込んだわけだから、結婚とか、ましてや出産っていうのは相当遠のくか、諦めるものだという雰囲気でした。

アスリート時代に見た「世界」との差

 それでも、世界に目を向けるとそうではありませんでした。子育てしながら国会議員をしている女性が普通にいましたし、アスリート時代も子育て中のオリンピックアスリートを何人も見てきました。話は少しそれますが、海外は何歳になっても大学に通いますよね。日本も今でこそ、リカレント教育、学び直しと言われるようになりましたけれども、海外は、ママさんで大学に行って、学内の寮で家族と一緒に生活をしているというパターンが普通にあって、すごいなって思っていました。1988年のカナダ・カルガリー五輪の時、カルガリー大学のキャンパス内にあるスケートリンクがオリンピック会場だったんですね。それで、カルガリー大学のキャンパスの中の寮がリニューアルされて、それが選手村になりました。五輪の間、学生はみんな冬のバカンスみたいなかたちで外に出てもらっていたのだと思います。

 そのカルガリー大学の寮に入ったときに、驚いたんです。一人住まい用だけでなく、子育て中の家族でも住めるような部屋など、あらゆるパターンの部屋があったのです。話を聞いたら、それは学生結婚して、子どもを育てながら通っている人もいるから、その人たちのためのフロアなんですよ、ということでした。学生をしながら働いている人も当然いました。そういうしっかりとした生活基盤があって、大学でいろんな研究をしながら、一方では、仕事も子育てもして、という生活スタイルが海外のスポーツ界では当たり前だったんですよね。それに比べて日本は遅れていて、そういったことを改革したいというのが政治家を志したきっかけになったのですが、いざ、政治の場に来てみたら、政治の場はさらに遅れていた、というのが実態でした。

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 「今度結婚します」と言ったら、政治家が結婚するのか、とびっくりされました。さらに妊娠・出産となったらもっとびっくりされて…ということで、社会では当たり前なことが国会では当たり前ではない、ということ自体がものすごく遅れていますよね。出産には反対する声もありました。出産をすると休むことになりますよね。子育てをしながらでは、結果的に国会議員の仕事が片手間になるのではないか、国民に選ばれた人間がそうであってはならないんだと言う人もいました。

 国会の規則も未整備でした。出産のために国会に欠席の届け出をしようとすると、その理由の選択肢に「公務、疾病」などしかなく、危うく「事故」として扱われそうになりました。その後、いろんな声を受けて参院規則は改正され、「公務、疾病、出産その他一時的な事故によって議院に出席することができないときは、その理由を記した欠席届書を議長に提出しなければならない」と「出産」が初めて付け加えられました。「出産」と書くことができるようになったのは良かったんですが、実際それで十分休めるかというと、そうではありません。古いしきたりでできている世界なので、当時は私自身、妊娠・出産で休むことに抵抗があり、産後1週間で仕事に復帰しました。国会議員は特別国家公務員という職種で、いわゆる事業主ですよね。自分の裁量の中でやりくりができる職業とみなされてしまうので、産休・育休期間を明記した制度がないわけですが、今後はこれをしっかり規定して、議会へのオンライン出席も可能にする必要性があると感じています。

 当時は、そうしたことを考えてもみないような状況ですし、出産自体に反対する人もいるなかで、「選挙で選ばれた国会議員の仕事を自分自身の子育てという理由でおろそかにするとは何事か」というような投書も来たりしていました。それで、「とにかく両立をさせなきゃいけない」と思い、早々に復帰したんですね。当時の議員会館はとても狭かったんですが、そこにベビーサークルをおいて、ベビーベッドをおいて、秘書にも協力してもらって、母乳を搾乳して保存しておいたり、ちょうど会議などから戻ってきたときに赤ちゃんが起きていれば、授乳したり、その繰り返しでした。とにかく当時は必死でした。

「休みづらくなった」女性の声に悩む

 さらに新しい葛藤もありました。子育てと両立をしている国会議員ということで、当時、子育て雑誌に取り上げられるようになると、今度は働く女性からこんな投書が来たんです。「上司から『同じ女性なんだから、君にもできるだろう』って言われて休みづらくなった」と。鳥肌が立ちましたね。私はこのやり方でできましたが、それは、国会議員という立場でサポートしてくれる人がいるからできるわけですよね。他にも「国会議員だからこそ堂々と産休を取ってくれたら、私たちはもっといい環境になったのに」「私たちを働きづらくした」「子育ての環境を整える国会議員が、それを逆にしていないか」といった投書がありました。どうすればいいのだろうと悩む毎日でした。

 それでも少しずつ、政治の場を変えようと努力してきました。私が2000年に女児を出産したのをきっかけに、野田聖子さんがバックアップしてくれて、国会に保育所導入を目指す議連が立ち上がりました。当事者である私がトップになると叩かれるから違う人に任せた方がいいと助言いただいて、今後子育てをするような男性に議連のトップに就いていただこうということになり、馳浩さんにお願いしました。今でこそ、「イクメン」だとか「男性育休」の話が当たり前になりましたが、当時はそうしたことがまだ稀で、これを機に進めたいという狙いもありました。男性の議員で、小さな子どもはいるけれども、自分は国会で働き、妻が家にいて子どもを育てているっていうケースはいっぱいありましたから、それが当たり前だと思っている社会を少しずつ変えていきたいという思いもあったんです。

後編では、不妊治療をして3人の子どもを授かったこと、一番下の子の多感な時期と参議院議員議員会長を務めた時期とが重なり苦労した体験などをつづります。

橋本聖子(はしもと・せいこ)

 参院比例区、当選5回、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長。1964年、10月生まれ。駒沢大附属苫小牧高校卒。スピードスケート、自転車競技選手として夏季・冬季通じて7回の五輪に出場。1992年冬季五輪アルベールビル大会・スピードスケート1500メートルで銅メダル獲得。内閣府特命担当(男女共同参画)大臣、女性活躍担当大臣などを歴任した。2021年2月から現職。

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  • 平山忠志 says:

    世界から見れば一流国のようだが、実際は男女共同参画を初め、政治の世界は三流国以下で、各議員の方々も自分は特権階級のように思っているようで、国民とは大きく解離がある。国内国外すべてに、問題があまりにも多すぎる。

    平山忠志 男性 70代以上

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