「子どもをたたいてしまって…」匿名の電話相談がコロナ禍で増加 悩みを受け止め30年、子どもの虐待防止センター
安心して話せる場を作ることを一番に
「子どもがいなくなればいいと思ってしまう。そんな自分がつらいです」。電話口からは、今にも泣き出しそうな母親の声が聞こえてくることが多いという。「さっき、思わずたたいてしまって…」と、子どもに手を上げてしまったことに、ショックを受けて相談してくる人もいる。
CCAPは1991年、子どもとの関わりに悩む親たちを支えようと、医師や保健師、弁護士など専門職と虐待の問題に関心がある一般市民らが開設。これまでに全国から11万件近くの相談を受けてきた。
相談電話は、CCAPの研修を受けたボランティア相談員が受けている。相談者の約9割が母親で、ほかに父親や親族、学校や子どもと関わる福祉の現場などで仕事をしている専門家からの悩みも聞く。
相談員歴19年のNさん(67)と同10年のSさん(60)は「安心して話せる場をつくることを一番大切にしています」。相手が気持ちや状況をうまく伝えられず、言葉に詰まることも少なくない。誰にも話せない思いを抱えながら孤立して子育てをしている相談者の話を受け止め、気持ちに寄り添って、やりとりをつないでいく。
深刻な状況を話され、心配になることもあるが「なんとかしたいと思って今日電話をかけてきてくれたのだから大丈夫」と相談者を信じて応じている。
コロナ禍「こんな時だからこそ」継続
全国に同様の電話相談が開設されたこともあり、年間相談件数は4957件だった2005年のピーク以降は減り続け、2018年に2000件を割った。ところが、ホームページを刷新した2019年以降、再び増加に転じ、昨年は2847件に。CCAPの片倉昭子理事は「コロナ禍でほとんどの電話相談窓口が閉じた時も、こんな時だからこそ相談を続けたいという相談員の声を受け、対応する相談員の人数を絞り、環境を整備して相談を受け続けてきた。そこで新しくつながった人も多く、相談が増えた一員かもしれない」と振り返る。
従来の主な相談内容=表(上)=のうち(2)はコロナ禍で変化があった。「家族が同時に家庭にいる時間が増えて、夫婦の子育て観や関わり方の違いが顕在化し、心配や不安、不満を訴える相談が増えた」
電話・匿名だからこその良さがある
電話相談の良さは、「子どもと一緒に対面の相談窓口には行きにくい人でも、全国どこからでも、家にいながらつながることができるところ。身なりを整える必要がなく、予約や交通費も不要。今、という時にすぐにかけることができる」。LINEなど電話以外の相談窓口も増えたが、「直接、声を介して気持ちのやりとりができ、相づちが返ってくる。相談者は、感情の起伏を受け止めてもらうことでほっとしたり、気持ちの整理がついたりするのだと思う」。
匿名で相談できるのも利点。片倉さんは「近年、虐待への認識が進み、自分の行為が虐待なのではないかと不安になる保護者が増えている。『手を上げたと相談したら、通告されてしまうかもしれない』といった不安を抱く人もいるが、そのような心配をせずに、安心して相談できる場であり続けたい」と話す。