〈変わる乳児院・前編〉産後うつの私を救ったのは乳児院 一人で頑張りすぎて…「もう限界」

(2022年5月4日付 東京新聞朝刊)
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長男(右)、長女(左)と近所を散歩する滝沢友紀さん=東京都杉並区で

タイトルカット 預けてよかった 変わる乳児院

 子育て中の保護者を支える社会のセーフティーネットの一つ、乳児院。その存在に救われた産後うつだった母親の体験と、変化しつつある乳児院の役割について伝えます。

2人目が生まれ、家事育児を一手に

 2人目が生まれた時、覚悟を決めた。「夫は仕事で忙しいから、私が家庭を回さなきゃ」。1人で頑張りすぎて、気付いたら「赤ちゃんと離れて1人になりたい」と思う自分がいた。

 東京都杉並区の漫画家・滝沢友紀さん(51)が、第2子の長女(5つ)を出産したのは2016年7月。長男(9つ)が3歳の時だった。夫でお笑いコンビ「マシンガンズ」の秀一さん(45)は生活費を稼ぐため朝も夜も仕事。育児と家事は当時、パートで育児休業中だった友紀さんが一手に担っていた。

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第2子出産後、1人で頑張りすぎて体調を崩してしまった滝沢友紀さん

 睡眠も食事も満足に取れない。「赤ちゃん返りした長男に抱きつかれ、もう少しで寝そうだった長女が起きて声を荒らげたことも」。9月に入ると授乳やおむつ替えで酷使したせいか、両腕がしびれてきた。赤ちゃんをいとしく思う気持ちは強かったが、「朝が来て、また今日も1人で育児だと思うと、不安でたまらなかった」。

「助けて」ママ友が保健師につないで

 「助けて」。連絡した保育園のママ友らがつないでくれた杉並区の保健師から、区が実施する最長7日間の宿泊型の一時保育「子どもショートステイ」の利用を提案された。宿泊先が乳児院だということは、利用を決めてから知った。「母乳で育てている娘を人に預けることに抵抗はあったが、もう自分が限界だった」。生後2カ月の長女は区内の乳児院に預けられた。

 その間に友紀さんはクリニックを受診し、産後うつと診断された。医師は「一度入院して休もう」と勧め、病院への紹介状を書いてくれた。

 児童相談所に担当が移り、長女はそのまま乳児院に入所することになった。長男はそれまで遠慮して頼れなかった都内の義母のもとへ。ギリギリまで追い詰められて、ようやく背負い込んだ荷物を下ろした。

〈後編〉は5日に公開します。

乳児院とは

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時代とともに役割を広げてきた乳児院(写真は東京都新宿区の二葉乳児院)

 児童福祉法37条に定められた、主に乳児を対象とする入所型の児童福祉施設(就学前まで利用可)。近年、より家庭的な環境で過ごせるよう、4~6人単位で暮らす小規模化が進む。運営費は国と自治体が2分の1ずつ負担。入所費は主に公費で賄われるが、家庭収入に応じて負担が発生する場合もある。厚生労働省によると、2021年3月末現在、全国に145施設あり、入所する乳幼児は2472人。2020年10月1日時点で、医師や看護師、保育士、栄養士ら5453人の職員が養育に当たる。

乳児院の役割と歴史 「孤児の保護」から「子育て支援」へ 

 乳児院の役割や入所理由は時代とともに変化している。1947年に設置された当初は、戦災孤児や、栄養不足などで発育不良の子どもを保護する目的だった。復興後は、家族の病気や経済的な事情などで一緒に暮らせない乳幼児とその家族を支えてきた。
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「子育てで転んでもいいし、へこんでもいい。その時は誰かが助けてくれる」と話す全国乳児福祉協議会の平田ルリ子会長=東京都千代田区で

「子を預けることが必要な時もある。倒れる前に助けを求めて」

 全ての乳児院が加入する全国乳児福祉協議会(東京)の平田ルリ子会長は「1980年代以降、女性の社会進出や離婚の増加などに伴い、子育て支援の役割を担うようになった」と話す。具体的な支援策の一つが、各市区町村との契約で、保護者の病気や育児疲れ、第2子以降の出産時などに一時的に子どもを預かる子育て短期支援事業(ショートステイ)。平田さんは「自分を緩めるために子を預けることが必要な時もある。頑張りすぎて倒れる前に助けを求めて」と訴える。

図解 乳児院の新規入所理由の変遷

 同協議会によると、入所理由は、平成に入ってから「虐待」が増え始めた。2019年度は最多の39.9%を占め、「父母の精神疾患と知的障害」が22.7%、「経済的困難」が6.3%と続いた。

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