〈古泉智浩さんの子育て日記〉16・ポケモンGOの魔力…やりたい一心で生活習慣どんどん改善 そして難しい「やめどき」

(2020年8月28日付 東京新聞朝刊に一部加筆)

寝っ転がってテレビを見るうーちゃん㊧と妹のぽんこちゃん

おばあちゃんのスマホに勝手に…

 6歳の養子の男の子、うーちゃんがとうとうゲーム「ポケモンGO」を始めてしまいました。

 以前からポケモンが大好きで、テレビアニメを夢中で見ておもちゃもたくさん持っています。そんな折、おばあちゃんのスマホを勝手に触ってゲームのアプリをインストールしていました。

 ゲームは麻薬のように人を魅了します。幼稚園児が手を出してゲーム依存になっても困ります。事実、うーちゃんはショッピングセンターのゲームコーナーにあるポケモンのカードゲームがやりたくてやりたくて、目つきが怖い、と感じるほどでした。

 「スマホのゲームならお店に連れて行かなくてもいいし、何百円も使うよりいい」とおばあちゃんは言いますが、スマホを奪われて電話をかけることにも不便しています。完全に禁止したいところですが、抑圧しすぎると強い反動があり、逆によくないことを僕は自分の経験で知っています。

 ポケモンGOはGPS(衛星利用測位システム)機能を用いた位置情報ゲームなので、町中を歩いて回る必要があります。うーちゃんに一人で外を出歩かせるわけにはいきません。僕はもともとそれほど熱心にゲームをする方ではなくて、ポケモンGOが大ブームの時もスルーでしたが、こうなっては仕方がありません。一緒に自分のスマホでやることにしました。

早起きも、お支度もできるように

 すると、これまでひどい夜更かしで早起きが全くできず、寝起きも悪かったうーちゃんなのに、「6時に起きて裏のお宮様に行って7時までポケモンGOをするぞ」と言うと、大喜びでバチッと目を覚まします。7時に帰宅して朝食の後に「靴下とハンカチを準備したら8時の登園まで遊んでいいよ」と言うと、パパッと食事と支度を済ませます。

 その上、寝る時はいまだにオムツだったのが、パンツで寝られるようにもなりました。

 夜もぐずぐず遊びながら時間をかけて食事をして、デザートのバニラアイスをゆっくりゆっくり食べていたのが、さっと食事を済ませてデザートなしで遊びたがります。テレビのポケモンを妹が見ている横で、うーちゃんは全然見ないでゲームに夢中です。

 ゲームの中で捕まえたポケモンは強さが数字で表示されます。

 「うーちゃん今のやつ、どのくらいの強さ?」

 「いちいちろく」

 「あれ? もしかしてうーちゃん、百の読み方分からない?」

 すっかり数字は読めるようになっていると思っていたら、十の位は読めるのに百の位の読み方がまだ分かっていませんでした。教えるとすんなり読めるようになりました。

うーちゃん以上に問題なのは僕

 毎朝夕、僕と二人で外を出歩いてポケモンを捕まえています。協力して強いポケモンを倒して、うーちゃんとの距離がぐっと縮まりました。保育園から家に戻ると帰宅を催促する電話が10分おきにかかってきます。

 日曜日はスマホのバッテリーが切れるまでやって、切れてもケーブルをつないで家の中で遊んでいます。「あんまりやりすぎるとダメだよ」とは言うのですが、他に何の用事もないのでどうにもやめどきがありません。

 それ以上に問題なのは、僕が仕事をサボってまでゲームをやりまくっていることです。どの口で「やりすぎはダメ」と言うのか。ポケモンの拠点を巡り、うーちゃんよりはるかにレベルを上げて、強いポケモンを何匹も持っています。

 「パパはどうしてそんなにポケモン持ってるの?」

 「うーちゃんに教えてあげるために無理して頑張っているんだよ」

 苦しい言い訳です。(漫画家)