ぎりぎり間に合った特別養子縁組 18歳直前で実現した男性「実の親と縁切れてこそ」 対象年齢引き上げで救済可能に

(2020年7月20日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 6歳未満だった特別養子縁組の対象年齢が、4月の民法改正で15歳未満に引き上げられ、条件付きで17歳までの縁組も可能になった。関東地方に住む高校3年の男性は6月、対象から外れる18歳になる直前に里親との縁組が実現した。戸籍上も実の親子関係になることを願い、「ぎりぎり間に合った」と安堵(あんど)する。担当した弁護士は「実親との縁が切れることが子どもの人生の安定につながることがある。今回はまさに法改正で救われたケースだ」と評価する。
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男性の写真を手に「この子と特別養子縁組ができる日が来るとは思わなかった」と話す戸籍上も母親の女性

ゼロ歳で引き取ったもう1人との”違い”

 男性は5歳で施設から里親夫婦=ともに50代=に引き取られ、育てられてきた。実親はシングルマザーで、精神的な病気で育てられる状態になく、男性を施設に預けた後、面会などの交流はなかった。

 男性が小学1年の時、夫婦は別のゼロ歳の男児を里子として引き取り、3年後に特別養子縁組をした。男性には年齢的に特別養子縁組ができないことを説明し、「普通養子縁組をしたいと思っている。普通縁組はいつでもできるから、焦らなくていいよ」と伝えた。男性は「縁組する気はない。実の親がいるのにする必要があるのか」と応じていた。

 中学に入ると学校に行けなくなり、家で暴れることも。他の子と自分の置かれた環境の違いに落ち込んでいた。

「実の親と縁が切れてこそ、意味がある」

 「特別養子縁組じゃないと意味ないんだよな」。高校生になった男性が切り出した言葉に、夫婦は驚いた。男性は続けた。「実の親と縁が切れてこそ、縁組の意味があるんだ」。この頃、将来的に実親に借金返済や介護・葬儀・相続などの問題が発生した場合、男性に連絡が来る可能性がある現実を、重い負担と感じるようになっていた。

 年長の子どもの健全な育成などを目的にした対象年齢引き上げは、男性が高校生になった2018年に法務省で実質審議が始まった。年齢は12、15、18歳未満の複数案が示され、男性は希望を持った。

 昨年6月、改正民法が成立し、12月には施行が今年4月1日と決まった。男性が18歳になるまでに手続きが間に合うかどうかというタイミングだった。年明けから弁護士に依頼して準備を進め、遠方の実親に連絡を取り同意を得るなどの手続きを終え、6月、特別養子縁組が成立した。

高校生になって、ようやく結論を出せた

 「重荷の一つが減り、前を向いて進めるようになった」と男性。縁組で実の母となった女性は「この子の場合は、葛藤を経て、高校生になってようやく結論を出せた。この年齢に意味があった」と話す。

 法改正の審議に関わった早稲田大法学学術院の棚村政行教授(66)は「実親の同意なしでも普通養子縁組ができる15歳で線を引く案を推す声が強かったが、『実親と縁を切ることに意味がある』という福祉の現場の声を重視し、18歳未満も対象とした」と説明する。

 男性を担当した山下敏雅弁護士(41)は「法律上の関係が続くことで子どもが苦しむ可能性は、年齢が大きくなっても全く変わらない」と指摘。「法改正で選択肢が増え、より年長の子の意思に沿うことができるようになった」と話している。

特別養子縁組とは

 実親との法的関係が残る普通養子縁組と異なり、戸籍上も養父母が実親扱いとなる。民法改正で4月から、対象年齢が6歳未満から15歳未満に変更された。本人の同意があり、15歳になる前から養親となる人と一緒に暮らしているなどの条件を満たせば、例外として15~17歳の縁組も認められる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年7月20日

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