「11ぴきのねこ」馬場のぼるさんのユーモアと人間愛 没後20年企画展、練馬区立美術館で9月12日まで

(2021年9月1日付 東京新聞朝刊)

絵本原画などが展示されている「まるごと馬場のぼる展」=練馬区で

 絵本「11ぴきのねこ」で知られる漫画家、馬場のぼるさん(1927~2001年)の没後20年を記念した企画展「まるごと馬場のぼる展 描いた つくった 楽しんだ ニャゴ!」が練馬区立美術館で開かれている。絵本や漫画など仕事の軌跡とともに、作品にも投影されている馬場さんの人間性を伝える内容だ。

「児童漫画界の三羽ガラス」から絵本へ

 馬場さんは青森県三戸町出身。練馬区は亡くなるまでの約50年間、暮らしたゆかりの地だ。

 1950年から少年誌で連載漫画を手掛けるようになった馬場さんは、手塚治虫さんや福井英一さんとともに「児童漫画界の三羽ガラス」と呼ばれ、人気を集めた。その後、表現の場を絵本に移し、1967年にこぐま社(文京区)から出版された「11ぴきのねこ」は、今も親しまれている。

「11ぴきのねことぶた」こぐま社、1976年刊 印刷原稿 特色刷り校正用リトグラフ・紙 こぐま社蔵

 11ぴきシリーズはライフワークとなり、6作を残しているが「私は、いわゆるねこ好きではなく、ねこを描くのが好きなのです。ねこの生き方は人間に似て、面白いです」と語っていた馬場さん。展示では、こぐま社が採用していた特色刷りの原稿を展示。馬場さんが1色ずつ色版を描いた過程を見ることができる。11ぴきのねこの原点となった文字のない漫画「ニャンニャン曼荼羅(まんだら)」も初めて公開されている。

漫画の原画も 笑いを意識、幅広い表現

 絵本作家として知られるが「漫画家が絵本を描いている」というスタンスにこだわっていたという。児童漫画「ブウタン」の原画のほか、大人向けの漫画、新聞の連載漫画なども紹介。絵本も漫画も、作品に通底するのは、人を傷つけないユーモアや、人間のおかしみやかなしみを感じさせる表現だ。

馬場さんの代表的な漫画作品の一つ「ブウタン」(「ブウタン」『幼年ブック』集英社、1954年掲載 漫画原稿 墨、水彩等・紙 こぐま社蔵)

 担当編集者として創作を見てきたこぐま社元編集長の関谷裕子さんは「一貫して『笑い』を意識し、大切にしながら描いてきた人だと思う。絵本だけではない馬場さんの幅広い表現に触れる機会になれば」と話している。

 企画展は9月12日まで。午前10時~午後6時。月曜休館。一般1000円、高校・大学生と65~74歳は800円、中学生以下と75歳以上は無料。問い合わせは練馬区立美術館=電話03(3577)1821=へで受け付けている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年9月1日