みんな僕を卒業していく、それでいい〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉

(2021年6月4日付 東京新聞朝刊)

 「4歳のお誕生日おめでとう!」。誕生日の朝を迎えた三男に妻が言うと、「えー、こんなにちっちゃいのにもう4歳なの?」と三男は言った。誕生日プレゼントには、欲しがっていた双眼鏡をあげた。

 その2日後に誕生日を迎えた僕は、「えー、こんなしっかりしてないのに、もう47歳なの?」と思った。誰もプレゼントは、くれなかった。

 そう、三男も気がつけばもう4歳。世に言うかわいい盛り。上の2人が、もうかわいくないわけではないが、そろそろ自分たちの世界に入る年頃で、今となっては、僕を玄関まで送り迎えしてくれるのは三男だけ。

 「ねえ、パパ。お仕事に行って、ゴリラとかペンギンとかいたらどうする?」と聞いてくる。「こんなかわいい質問が、この世にあるのか?」と僕が目を細めていると、「なに幸せ感じてんの?」と妻。

 それがこの前の週末。長男が友達と遊びに行くと言いだした。それならと、次男と三男を海に遊びに行こうと誘ったら、次男は急に僕と目をそらしだし、三男には、「パパと海行かない。かんちゃん(長男)と遊ぶ」とはっきり言われた。僕はショックで海パンのまま布団にくるまった。

 「三男もそのうちに僕を卒業していく。それでいいんだ。僕にはまだ四男がいる」。僕は気を取り直して魚屋に行き、イナダをまるまる一匹買ってきて、お皿いっぱいのお刺し身を作った。

 腹ぺこになって帰ってきた子どもたちが、お刺し身に歓声をあげた。「パパのこと好きか?」と三男に聞いた。「ママはすき。パパはちょっとにがて」と言われた。

加瀬健太郎(かせ・けんたろう)

 写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。10歳、8歳、3歳、0歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。

コメント

  • 三兄弟が、結婚、就職、同棲で次々に巣立ちました。夏休みに朝昼晩と炊飯器いっぱいの5合の白飯を炊いていたのを懐かしく思います。子育て中の方には楽しんで下さい!と言いたいです。たまに子供達帰ってきては、私
     
  • 子供の成長は早過ぎる 可愛い盛りはもう少しゆっくりでもイイのにと思う 4人の子育て毎日が正直疲れるが 親は子供に育てられて 親になっていくのだなぁーと つくづく思う