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〈あべ弘士 子どもがおとなになる間〉vol.5 親離れ・子離れできないのは人間だけ

   

 旭川のわが家の裏山からは9月ごろになると、ギャーギャーってものすごい声が聞こえてくる。キツネの親子の別れの季節。お母さんは「こっちに来るな」とばかりに子どもを突き放す。子どもたちは仕方なく、自分の新たなテリトリーを探しに出ていくのです。半分はうまくいかずに冬を越せずに死んでしまうんだけれど。


<前回はこちら>かっこいい大人の大切さ


 「離れる」っていうのは、次の世代をつくるということ。だから、親は子と離れなくちゃいけない。動物はみんな離れる、絶対に。だけど、人間だけが親離れ、子離れできないのが今の社会です。

 子どもが少なくなって、一家庭に一人か二人。じいちゃんばあちゃんも同居していない核家族が多いし、周りの大人が面倒みたり教えてくれたりする機会も少ないから、親は「自分一人で子どもを守らなくてはならない」って思ってしまうよね。特にお母さんたちは大変な思いをしている。

 そういう子育てになるとつい、「しっかり勉強させなきゃ」と子どもを追い詰めがちになる。でも、そんな環境だからこそ、小さい時から「親から遠くに離れて生活する楽しさ」を教えていくことが大事だと思うな。中学生くらいになって「はい、あんたは13歳になったから、自立しなさい」って言われても、急には無理だからね。

 僕はあまり家族のことは話したり書いたりしないんだけれど、どうやって子どもを離したか、ということは伝えてもいいかな。長男には小学校に入るか入らないかの時期から、地図を教えたんだ。「京都はここだね。島根はここか」とか言いながら地図ばっかり見せてた。そしたらものすごい地図好きの少年になったよ。地図を見ているうちに、歴史にも自然と関心を持つようになっていった。

 中学3年生の春、高校受験を終えたその日に長男は、「お父さんちょっとこれから旅に出てくる。城と忍者を見に行きたいんだ」って。小遣いをためて、計画表も作ってた。金沢城を見てから、忍者にゆかりの滋賀・甲賀や三重・伊賀、長野・戸隠などを回る二週間ほどの旅だった。息子はその旅で金沢が気に入って、金沢の大学に進学したんですよ。

 長女には首都の名前を教えました。今でも難しいのも全部覚えてるみたいだよ。パラグアイの首都、分かりますか? 僕が考えた覚え方はこう。「はらぐあいわるいのであすにしよう(腹具合悪いので明日にしよう)」。答えはアスンシオンですよ(笑)。いいでしょう?

 外に広い世界があるってことを自然と感じ取っていってくれたのかな、今は二人とも北海道から離れているけれど、それぞれの道を歩んでいます。特に息子とは男同士のライバル心もあって、離れていても、お互い良い仕事をしていたいという気持ちになる。距離は離れてても、互いを信用しているから、心は近い気がしています。親子で大事なのは心の距離なんじゃないか、僕はそう思います。(文と絵・あべ弘士)

 動物の命を描いた多くの作品を手がけている絵本作家のあべ弘士さんから、子育て中の人たちや子どもにかかわる人たちへのメッセージを月1回、お届けします。