児童養護施設を巣立った若者を支えよう さいたま市、ふるさと納税を通じた寄付を募集中

前田朋子 (2021年7月2日付 東京新聞朝刊)

「ふるさとチョイス」の応援募集画面

 さいたま市は児童養護施設の退所者を支援するため、ふるさと納税制度を利用した「ガバメントクラウドファンディング(GCF)」で寄付を募っている。目標金額は300万円。施設を退所し、保護者がいない中で自立を迫られる子どもたちが孤立するのを防ぎ、支える事業に使われる。

就労相談や生活スキルのアフターケア

 さいたま市子ども家庭総合センターによると、寄付金は埼玉県が2017年度から始めた「希望の家」事業と、「児童養護施設退所者等アフターケア」事業に活用する。

 「希望の家」は、児童養護施設を出て進学する子どもに低額で利用できる住居を提供するもの。「アフターケア」は退所後おおむね10年までの人を対象に、クローバーハウスという名称の「居場所」を用意。仲間や施設出身のスタッフと交流できるほか、悩みや就労の相談にも応じる。希望により生活スキルを身に付けるセミナーなども開く。

「希望の家」ほぼ満室 もっと支援を

 埼玉県やさいたま市によると、「希望の家」は用意した16室がほぼ満室の状態。クローバーハウスは昨年度、延べ483人の利用があった。両事業とも利用者にはさいたま市の施設出身者や在住者が多く、クローバーハウスも市内にあることから、市は本年度から予算を組んで費用拠出している。

 また、コロナ禍で孤立感や困難がさらに高まっているおそれもあり、昨年の市のアンケートで居室利用を希望した人数を参考に金額を設定。寄付を募って追加の支援をすることにした。

「退所後の困難」を知ってもらいたい

 さいたま市子ども家庭総合センターによると、児童養護施設には近年、ランドセルや寄付金が直接届けられるなど支援の輪が広がっているが、退所後の困難はほとんど知られず、市民が直接支援するのも難しい。子どもたちの現状を知ってもらう意味も込めて、GCFの手法で広く支援を呼び掛けることにした。

 寄付の受付期間は8月末まで。ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」から申し込む。市外の寄付者には、希望により盆栽やヨーロッパ野菜詰め合わせセットなど返礼品が贈られる。返礼品はないが、市内の人も寄付できる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年6月26日