目黒女児虐待死事件 「もうおねがい ゆるして」は本人の意思じゃない
「言われるがまま/覚えたてのひらがなを/使って書かされた/ぬけがら」
収録された詩では、「5歳の少女が/ひらがなだけの文章を書いて/生きたいと願っていた― 本当だろうか?」と疑問を呈し、(中略)「言われるがまま/覚えたてのひらがなを/使って書かされた/ぬけがら」とつづった。
高橋さんは、あのノートを女児の「心の叫び」とし、「かわいそう」とあおる風潮が虐待の根にある問題を見えづらくすると指摘。虐待している親の回復プログラムを実践してきた経験などから、「子どもを助けるためには、まず親を」と主張し、気持ちがほどけるような「(親や子どもらへの)はじまりのことば」こそが必要とする。
虐待が命の前に子どもの魂を奪っている
一方で、今回の著書には、少女のノートの文章も収録した。「全ての感情が奪われた抜け殻のような文字から、虐待が命の前に、子どもの魂を奪っていると感じた。すごく心を動かす一方、あそこには心も何もなかった。だから、そういうものとして残すことに意味があると考えた」という。「あのとき流した涙を、一人一人の胸の内に持ち続けてほしい」と呼びかける。
刊行に当たっては、「百年書房」の藤田昌平代表(49)が女児のノートをすぐに文庫化したいと、高橋さんに相談。高橋さんは「児童虐待は、私たちにとって日常にある問題。目黒の事件が特別ではない」と、当初あまり積極的ではなかったという。その後、ノートが誤解、誤読されたまま事件が風化しているとの高橋さんの見解を聞き、「あの時に何を思ったかを残すために、やはり本にまとめることになった」と藤田さんは説明する。
児童養護施設で関わった少年少女の声を代弁してつづった「はじめてはいたくつした」「嘘(うそ)つき」(ともに百年書房刊)に続き、高橋さんの虐待に関する詩集絵本は3冊目。来年以降、これらの本を携えて、朗読や講演などで全国行脚する予定もあるという。
「はじまりのことば」は500円(税別)。問い合わせは、百年書房=電話03(6666)9594=へ。