ずっと川越で暮らしたい 障害者が働ける干しいも作りの作業所をもう1カ所 母親らが運営費の寄付を呼び掛け
中里宏 (2020年9月11日付 東京新聞朝刊)
知的障害者らが働く「川越いもの子作業所」などを運営する埼玉県川越市の社会福祉法人「皆の郷」が、川越名物サツマイモの干しいもを作る「第4川越いもの子作業所」の来年4月開所を目指し、寄付を募っている。新たにクラウドファンディングも始め、職員や保護者らは「川越になかった干しいもを新たな地場商品にすることで、農家や企業など地域との関係を広げ、未来につなげていきたい」と夢を描いている。
5カ所に230人が通所、入所施設は85人
「川越いもの子作業所」は1987年、当時は高校を卒業すると行き場のなかった重度障害児の母親たちが中心になり、無認可小規模作業所として開設したのが始まり。91年に法人化。「川越で行き場のない障害者をつくらない」を合言葉に、5年ごとに新しい施設を造ることを目標に掲げてきた。
現在、作業所など5つの働く場に230人が通い、グループホームや入所施設に85人が入居している。好きなデザインを食用インクでプリントできるせんべいやうどんは品質が評価され、企業との連携も生んできた。ただ、施設はどこも定員がいっぱいになり、新たな利用者の受け入れが難しくなっているという。
目標額は200万円「次世代への社会資源」
第4作業所は2016年に建設を決定。昨年6月にようやく川越市石田に土地を借りることができた。生活介護施設を兼ねる「多機能型障害者事業所」として建設され、総事業費は4億3000万円。保護者と職員でつくる「皆の郷をささえる会」(約500人)の母親たちを中心に、昨年12月からほぼ毎日、企業を回るなどして6000万円を目標に寄付を募ってきた。
一方、新型コロナウイルスの感染拡大で、計500万円の収益を見込んでいたチャリティーコンサート(6月)や市立富士見中学校でのバザーイベント(11月)が中止になった。開所後の運営費に充てるため、新たにクラウドファンディングを始めた。
募集は11月6日までで、目標額は200万円。皆の郷の町田初枝理事長は「子どもたちが住んでいるこの町に、行き場をつくっていきたいという思い」と協力を求め、大畠宗宏常務理事は「干しいも作りは障害の重い人も参加できる。作業所は自分たちの利益のためではなく、社会資源として次の世代のために実現させたい」と話している。