コロナ禍で障害ある子の学びが置き去りに… そこで誕生「まなキキ」 Webで幅広くインクルーシブ教育

林朋実 (2020年8月31日付 東京新聞朝刊)
 津田塾大(東京都小平市)准教授で、障害のある子もない子も共に学ぶ「インクルーシブ教育」を研究し、その教育支援室ディレクターを務める柴田邦臣さん(47)。コロナ禍で置き去りにされがちな障害のある子の学びを支える取り組みについて話を聞きました。
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「コロナ禍で子どもたちの『学び』が受けたダメージをきちんと見つめなければいけない」と柴田邦臣准教授=小平市で

見つけにくい障害児向けのオンライン教材

 4月上旬、研究を通じて以前から交流のあった特別支援学校の教員や保護者らから、新型コロナウイルスの影響で休校になった子どもたちがショックを受けていると聞き、危機感を抱いた。

 「学校での学習が『当たり前』ではなくなった。学ぶことへの諦めや不信感が生じてしまうのではないか。彼らをサポートし、学びがワクワクするものだということを伝えなければいけないと考えた」

 支援室のほかの研究者らと障害のある子どもたちが自宅で学習する環境を調べたが、目が見えない子や耳が聞こえない子らのためのオンライン教材は容易には見つからなかった。インターネット空間の中から探し出す手間がかかり、障害のある子や保護者にとっては事実上「学校のプリントしかない状況」だった。

教材紹介のほか津田塾大学生のアドバイスも

 そこで、置き去りにされがちな障害のある子の学びを支えようと、「学びの危機プロジェクト」を立ち上げ、Webサイトを開いた。略称は「まなキキ」。

 字幕や点訳、音訳データがあるほか、知的障害や学習障害のある子の理解が進むように丁寧に解説などを行うオンライン教材へのリンク集を教科ごとに掲載した。「視覚的な解説が充実」など、使いやすい点も併せて紹介した。

 まなキキは、教材リンク集にはとどまらない。教員を目指す津田塾大の学生らが「学びのナビゲーター」として登場し、各教科を学ぶ楽しさを「お姉さん目線」で説く。「円周率は何の役に立つのか」「フネを表す漢字の使い分けは」といったコラムも書く。「こういう見方も面白いよ、こんな学び方もあるよというアドバイスを得られるのが、まなキキの特長です」

学びの危機は終わっていない

 多くの学校の再開から約3カ月となるが、学びの危機は終わっていないと考えている。当初は、休校中の学習支援が目的だったプロジェクトの重要性も変わらない。

 「2学期もグループワークや社会科見学が難しい状況が続くだろう。今後ますます学習の意欲をなくす子が増えるのではないか。むしろこれからが危機の本番。まなキキでの支援を広げていきたい」

「学びの危機」プロジェクトのサイト「まなキキ」

 国語など5教科のお薦めリンク集や「学びのナビゲーター」によるコラムを掲載。社会と仕事の仕組みが学べる「エッセンシャルワーカーありがとう特集」や、障害のある人がデジタル機器を使う上で役立つ情報をまとめた「デジタル時代の生活ヒント」など、さまざまなコンテンツがある。URLは https://learningcrisis.net/

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年8月31日

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