時代錯誤だと異論噴出…「忙しいはありがたい」 新人教員向け冊子に長時間労働を助長する記述 千葉県教委が改訂へ
2013年の「学級づくりガイドブック」
問題の冊子は、千葉県総合教育センターが2013年に公表した「学級づくりガイドブック」。子どもと保護者との人間関係のつくり方や、規範意識の育て方などが31ページにわたってつづられている。このうち、複数の現職教員が疑問視するのが「教師としての在り方」と題された項目。「『忙しい』は『ありがたい』ことと考えましょう。自分が成長するチャンスです」「心がけたい言葉は『私にやらせてください』」と記載されている。
4月に新採用された教員は同センターのホームページから冊子をダウンロード。県教育委員会は2015年度以降、課題リポートを採用校に提出させている。
「誰も異論を唱えないのが不思議」
小学校のベテラン男性教員は「特に若手の現職教員から反発が大きい。こんなことをやっていると、職場や自分の将来が心配になる気持ちが分かっていない」と指摘。高校講師の男性は「学校現場は多忙が実情。『忙しいと感じることは仕事が下手だから、悪いこと』と言わんばかりだ」と憤る。
4月に県内公立学校に教諭として着任予定の大学4年生の男性(22)は「参考になる部分もあるが、明らかに時代錯誤な文言に誰も異論を唱えず、自分たちに読ませることが不思議。教育現場に古い体質が残っていると感じてしまう」と残念がった。
識者の声「本当に危うい」
◇教員の労働環境を研究する名古屋大の内田良教授(教育社会学)の話 千葉県教委は教員が自分だけで解決できずに苦しんでいる長時間労働を率先してコントロールしなければいけない立場。このような不適切な内容を含む文書を資料に用いていることは重大な問題。過重労働に耐えるだけでなく、それを超えて、ありがたいと思いなさいとまで言っている部分は本当に危うい。自己責任にさいなまれ、追い込まれた教員が現場から離脱してしまう。
過労死ライン超え8.3%
千葉県教育委員会は毎年、政令市の千葉市を除く県内の公立学校全1110校のフルタイム勤務者全員(約3万4000人)の勤務時間を調査。昨年の調査では、文部科学省が指針で時間外労働の上限としている「月45時間」を超える教諭(実習助手、講師を含む)が42.4%と過半数に迫る。過労死ラインの月80時間を超える教諭も8.3%に上った。
中学校は特に多忙を極めており、月45時間超えの教諭は58.9%、過労死ライン超えも20.5%。部活動の指導時間などが影響しているとみられる。県教委の別の教職員意識調査では、83%が「業務に『多忙感』を感じている」と回答した。
県教委は「学校における働き方改革推進プラン」に基づき、時間外労働の削減を図っている。
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