教員いまだブラック労働「面談は土日で」「うちの子に特別な宿題を」 深刻な教員不足
残業超過は中学校77% 小学校64%
文部科学省は4月28日、2022年度の教員勤務実態調査結果(速報値)を公表した。国の指針で残業時間上限の月45時間超に相当する学校内勤務時間「週50時間以上」の教諭は小学校で64.5%、中学校は77.1%に上り、深刻な長時間労働が続く実態が分かった。教員の仕事を手助けする人の配置は徐々に増えているが、担う仕事は依然多く、現場から「教員不足を何とかしてほしい」という切実な声が聞かれた。
頼まれると「その日は休み」と言えず…
うちの子のことで、面談してください。土曜か日曜で。平日は仕事なので―。こう頼む保護者は少なくないと、東京都内の公立中学で3年の担任を務める30代女性教員は明かす。「『その日は休みで…』と言えば関係が悪くなるので、引き受けますね」
ここ数年、良い変化もある。校長が「働き過ぎに気を付けて」と配慮し、45分間の休憩時間は手を休められる。休憩時間中の職員会議が当たり前だったが、なくなった。ただ、休憩時間に生徒や保護者から相談や電話があれば対応する。「うちの子に特別な宿題を出して」などの保護者の要望も高まり、結果として労働時間が積み重なる。
中学の部活動は長時間労働の要因のひとつだ。文科省は部活動を地域団体や民間に委託する「地域移行」を促し、本年度から3年間を推進期間としている。女性教員は運動部の顧問も務めるが、「3年後に地域移行なんて、無理」。
テストの採点など任せたくない仕事も
地域の人が指導員として週4日、部活動の指導を手伝ってくれる。その人が地域移行の担い手になる可能性は、と聞くと「無理でしょう。地域移行となると、予算管理など顧問の仕事があり、生徒への責任も伴う。そこまで引き受ける人や団体がいるのか…」
文科省は、教員の事務作業などを引き受ける支援員の配置も進める。支援員がいる都内の公立小学校の40代の男性教員は「支援員に頼めるけど、テストの採点など任せたくない仕事は多い。消しゴムで消した跡など、採点しながら、子どもの学習状況が分かることはたくさんある」。
文科省は次々に働き方改革を打ち出すが、「できることは、やり尽くしたと感じる」と男性教員。知人には、体調を崩した教員や、引退したのに「人が足りない」と頼まれて教壇に立つ70代の教員もいる。「根本は、やはり教員不足。文科省は現実に正面から向き合ってほしい」
過労死ライン超えは大きく改善したが
教員勤務実態調査結果(速報値)を受け、文科省は働き方改革の成果があったとする一方で、依然として長時間労働が常態化しているとして、今後、中教審で教員の処遇改善に向けて議論し、残業代の代わりに給与月額の4%相当の「教職調整額」を支給すると定めた教職員給与特別措置法(給特法)の改正を目指す。
調査には公立小中2377校の計約3万5000人が回答。夏休み中の8月と通常時の10~11月で連続する7日間の勤務状況を聞いた。8月の状況を調べたのは初めて。
過労死ラインとされる月80時間超の残業に相当する学校内勤務時間「週60時間以上」の教諭は、小学校で前回2016年度調査より19.2ポイント減の14.2%、中学校が21.1ポイント減の36.6%と大きく改善した。
通常時の1週間の平均勤務時間は小中の全職種で減少し、前回60時間を超えた小中の副校長・教頭は58時間台となり、中学校教諭は6時間近く減って57時間24分だった。
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