小中学校の外部職員は倍増したのに…教員の残業が減らない 現場の声「授業以外の業務削減が不十分」

山田晃史 (2022年10月8日付 東京新聞朝刊)
 小中学校の教員の働き方改革がいまだ進んでいない。教員の業務負担の軽減を図ろうとカウンセラーや補助職員など公立校の外部人材の数を、政府や自治体は2015年度から2倍に増やしたが、教員の残業時間はほぼ減っていない。授業以外の業務について、管理職らによる削減が不十分だという声が、現場からは根強い。

図解 学校支援の外部人材は2倍なのに教員の残業時間はほぼ変わらず

「出世を狙う管理職は全部やろうと」

 「外部人材は助かる部分もあるけど、子どもに直接関係のない業務が多くて仕事量はさほど減っていない」。東京都内の中学校で働く男性教員(41)は語る。教育委員会から求められる報告書類が多く、いじめ、不登校など種類もどんどん増える。学力向上のため自治体が活用する民間テストも、答案をコピーしてわざわざ自校で採点。「結果がくる前に、校長が教委に報告するためだけにやっている」とため息をつく。

 都内の小学校の女性教員(59)は、英語やプログラミングなど教える内容が増えて負担を感じる。始業前や放課後学習などを行うよう教委から求められ、「教委は新しい取り組みの通達はするけれど、やめていいことは明確化しない。出世を狙う管理職は全部やろうとする」と不満を語る。

支援員、カウンセラー、部活指導員

 日本の教員は、本業の授業以外にも、電話・来客対応などさまざまな業務に追われている。政府と自治体は負担軽減のため、支援員やカウンセラー、部活指導員、学習指導員といった外部人材を増やしてきた。その数は2015年度の3万5200人から、2022年度は公立の小中学校など約3万校の7万400人まで増加。国と自治体はこの間の予算として計約2960億円を費やした。

 教職員の定数は近年69万人ほどの横ばいで推移し、児童生徒数の方が減少幅は大きい。その結果、児童生徒40人に対する定数は1989年度で2人だったが、2021年度は3人になっている。

「教育的意義がある」が殺し文句に

 しかし、連合総研が教員1万人に行った今年の調査では、残業時間の平均は月123時間と過労死ライン(月80時間)を超え、2015年の前回調査から減ったのはわずか6時間。同総研は、放課後の見回りや休み時間の対応、部活動といった業務の見直しがほとんど進んでいないと分析する。見直しの指針を示す文部科学省の担当者は「慣例にとらわれず見直すよう教委に周知している。予算支援や事例周知で取り組みが進むようにしたい」と話した。

 教育研究家の妹尾昌俊氏は「教育的意義があるという言葉が殺し文句となり業務を減らせず、教委や学校は自ら仕事を増やしがち」と背景を解説。「掃除など外部委託できる業務も見直す必要がある」と話す。

 教員採用試験の倍率は2000年度の13.3倍をピークに低下を続け、2022年度に過去最低の3.7倍となった。慶応大の中室牧子教授は「ブラックな職場のままでは人も来ないし、流出も止められない。人を増やす前に業務量や働き方を見直すべきだ」と強調した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年10月8日

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