新任教員が辞めないよう支えたい 12年目の先輩が「中学教師1年目の教科書」を出版 増える一方の仕事…新人でも疑問を持って

(2022年5月26日付 東京新聞朝刊)
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「中学教師1年目の教科書」を出版した前川智美さん

 全国の公立学校で教員不足が問題となる中、志を持ち教職に就いた若い世代が辞めないよう支えたいと、東京都板橋区立中学校で国語教員をしている前川智美さん(33)が著書「中学教師1年目の教科書」(明治図書)を出した。教員向けのガイドブックだが、「学校現場が変わらなくてはならない今、教員の仕事や現場の実態を多くの人に知ってほしい」との思いも込めた。 

授業増加、デジタル対応 高まる負担

 教員歴12年目の前川さんも、仕事の負担が増えていることを実感する。「授業数や内容が増え、生徒や保護者への対応、デジタルを活用した授業など負担は大きくなるばかり。着任1年目の新人もベテラン並みの働きを求められる」

 「まじめに勉強し、理想を抱いて教員になった人ほど気持ちが追いつかなかったり、余裕がなくなったりすることがある」とも。今年も大型連休明けに新人がSNSで「辞めたい」と発信しているのを見て「苦しい気持ちになった」と話す。

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東京都内の中学校で国語を教える前川智美さん(本人提供)

 本は、そんな状況を改善したいとの思いで書いた。都教育委員会の研修で若手教員の指導を担った経験などを生かし、授業の組み立て方や学級運営の基本から、「職員室ってどんな場所?」「おしゃれはどこまで許される?」といった話題まで幅広い疑問にQ&A形式で答えている。「職員室の隣の席の先生に聞くような感覚で読んでほしい」

自分も「深夜までが当たり前」だった

 教員の働き方も取り上げた。前川さんは7年目くらいまで「深夜まで仕事をするのが当たり前」という感覚だった。父親の病気が分かった際も「看病にもっと時間を割けたら」と思いながら部活動も担当するなど「心身共にギリギリだった」と振り返る。

写真 「中学1年目の教科書」

 本では「早い段階から働き方を考え、改善する意識を持ち続けて」と呼び掛ける。子育てと仕事を両立している手本になる人を探し、時間のやりくりを学ぶことも勧める。「遅くまで残業する人が立派で、定時退勤は迷惑という風潮の学校もあるかもしれないが、それは間違い」。自身も転任を機に働き方を見直し、仕事の軽重をつけるなどしてできるだけ早く帰るようにしてきたという。

 長時間労働や校則指導など学校現場では当たり前とされてきたことへの風当たりが強まっている。「1年目でも、疑問を持てる教員になって」と前川さん。「教員の一番の仕事は、豊かな授業を通して子どもたちが深く考えたり、学びたい気持ちを育てたりすること。成長に立ち会える魅力的な仕事を長く続けられるよう発信を続けたい」

2018年度は431人が1年以内に依願退職 「病気」の111人は大半が精神疾患 

 文部科学省が1月に公表した教員不足の実態調査結果によると、昨年4月時点で、全国の公立小中高校・特別支援学校で不足していた教員数は計2558人。不足率は0.31%だった。学級担任が配置できなかったり、教科担任が足りず一時授業ができなかったりするケースも出た。

 不足の主な理由は産休・育休を取得する人や、過労やストレスで心身を病み休職する人が増えたこと。多忙な働き方が敬遠されて志望者も減り、多様な人材の確保が難しくなっている。

 若手の離職も目立つ。文科省によると、2018年度に採用された全国の公立学校教員のうち全体の1%強に当たる431人が「試用期間」の1年以内に依願退職した。理由は自己都合が299人と最多。病気は111人で、大半が精神疾患だった。19年度の調査では、全国の公立中学校教員の離職者9059人のうち30歳未満は9.3%だった。

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