ねえ、パパの遺伝子って、どうやって僕に入ったの?〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
長男が修学旅行で日光に行ってきた。お土産に「いちご餅と木刀と十手」を買ってきた。この令和の世に、まだ木刀を買う子どもがいるとは思わなかったが、まさかのわが家に、十手とセットでやってきた。
さかのぼること36年、小学生だった僕が修学旅行の伊勢で買ったお土産が、「赤福餅と木刀」。お土産にアップデートがないのか、遺伝子の情報操作か。
とにかく、長男がお小遣いから計算して、お土産を選んでいる姿を想像すると、不覚にも涙腺が刺激され、すでにほこりをかぶりかけているこの木刀と十手が、いとおしくさえ思えてくるのです。
また別の日、次男が「ねえ、パパの遺伝子って、どうやって僕に入ったの?」と聞いてきた。虚をつかれた格好の僕に、「ママの卵子に、どうやってパパの精子が受精したのかが、わかんないんだよね」と「人体のふしぎ図鑑」を愛読している次男は畳みかけてきた。
僕が「テレビで見たサケの産卵。メスの産んだ卵にオスがぱっと白いのかけたやろ? あんな感じやと思うよ」とぼかした返事をすると、「人間の場合は、睾丸(こうがん)に注射して精子を抜いて、ママの子宮に注射するの? 痛(い)ったそう」と突っ走る次男。
「痛くない注射かな。ピピッとなるかんじ」と、もう自分でも何言ってるのかわからない。「ピピッって、どんなふうに?」と次男。「…。うまいこと」と僕。「うまいことって?」と次男。「ピピッと…」。「ピ…?」…。
こうやって、生命誕生の神秘と秋が、深まっていく今日この頃です。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。12歳、10歳、5歳、2歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
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