これは「しつけ」なのか、親のメンツなのか〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉

(2021年11月5日付 東京新聞朝刊)

お父ちゃんやってます!加瀬健太郎

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 「しつけ」とは、「しつけ糸」に由来するとも言われていて、着物の仮縫いの「仕付け」は肝心なところだけざっくりと縫い、完成したら、しつけ糸を抜く。子どもの成長でも、しつけが終われば、子ども自らが、しつけ糸を抜くことで自立となる。

 というようなことを先日、僕がゲスト出演したNHKのラジオ番組で、恵泉女学園大学長の大日向雅美先生が話されていた。

 何て深く心に届くことを言われるんだろう大日向先生。それに比べ、番組を通して、何を言っているのか分からなかった僕。しばらく落ち込んだ。

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 それはさておき、わが家の「しつけ」。例えば、僕はうちの子に「友達の家行ったら『おじゃまします』ってちゃんと言ってや。でないと親がちゃんとしてないと思われるんやで」と言う。自分で言ってて「しつけ」してるのか、親としてのメンツを気にしているのかよく分からなくなる。

 そんな僕のちっさい思惑を軽々と飛び越えてくるのが、子どもの友だちのOちゃん。学校帰り、いつもうちに寄るOちゃんは、「おじゃまします」なんて言わない。「私だ」と言って入ってくる。

 うちの子がいなくても仕事してる僕と並んで宿題をする。一度「ゲームは宿題してから」と言ったら、「その言葉、聞き飽きたんだよ」と低い声で言われた。笑える。

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 この前は、トイレのドアを開けたままきばっていたので、「ドアぐらい閉めてや」と僕が言うと、「大丈夫だって」と言ってきた。こっちが大丈夫ではない。

 いつも、細い体にピタピタの黄色のズボンをはいて、ロックスターを思わせるOちゃん。僕はひそかに、この子は大物になるんじゃないかと思っている。

加瀬健太郎(かせ・けんたろう)

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 写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。11歳、9歳、4歳、1歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。

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  • 匿名 says:

    毎月、加瀬さんの記事を東京新聞紙面でも楽しみにしております。お子さん達の何気ない自然体の写真がとても微笑ましく素敵で、写真を眺めているだけで賑やかな会話が聞こえてきそうです。今回の記事もひたすら主人と笑わせていただきました。我が家も13歳、7歳の男の子がおります。加瀬さんファミリーを見習って、子供たちの一瞬一瞬を大切にしていきたいです。

      

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