【考えようPTA】P連に異議あり! 人手や加盟費が重荷…「意義を感じない」と脱退する単Pも 世田谷や松戸の注目事例
建前上は「単Pの上部組織ではない」が実態は…
各校のPTAを「単位PTA(単P)」と呼ぶのに対し、市区町村ごとのPTA連合(P連)は「○市PTA連絡(連合)協議会」の名称から「市連P」「区P連」などと略される。
P連の多くは活動の目的に「単P同士の横のつながりをつくる」「声をまとめ行政に伝える」をあげる。建前上は「P連は単Pの上部組織ではない」が、P連の人手と運営費は自動的に単Pに割り振られている場合が多い。
この年度替わり、従来のP連との関係のあり方に異議を唱えた単Pがある。
バレーボール大会に広報紙発行 誰のため?
まずは加盟費と意義を問題視した例。千葉県松戸市立栗ケ沢小PTAは3月末で、1世帯あたり年間72円を負担する松戸市PTA連絡協議会(市連P)を脱退した。
同小PTAでは、ペーパーレス化を進めるなど活動を見直す中で、会費の使途も再検討した。年間2400円の会費を本年度は半額以下にする方針だ。竹内幸枝会長(46)は「毎年加盟費3万円近くを納めていた。市連Pは母親のバレーボール大会や広報紙の発行など、社会教育と銘打った活動がメイン。会費は、直接または間接的に子どもたちに還元される活動に使いたい」と決断した。市連Pについても「単P同士の意見・情報交換の場を提供したり、単P活動の適正化などに向けてリーダーシップを発揮してほしいところだが、そうなっていない」と苦言を呈する。
強制的に割り振られる人手 「制度見直して」
人手と制度の問題に声を上げた単Pもある。世田谷区立小学校PTA連合協議会(世小P)に加盟する弦巻小PTAの岡田憲治会長(57)は1月、「次年度は世小Pの理事として規定の1人を派遣できない」と世小Pに連絡した。
弦巻小は保護者の約7割が共働き。2年間かけて活動のスリム化を進めてきた岡田会長は「年間20回の平日開催の会合に出席を求められる役に対して、無理やり人を立てるのはスリム化の流れにも逆行しており難しい」と話す。代替案として、3人を連名で「世小P担当」とし、都合のつく人が交代で出席する旨を伝えた。「単Pの同意なく強制的に割り振られる現状はおかしい」と制度の見直しも提案した。
P連側も運営を模索 「活動を絞っていく途上」
P連側も時代や実情に合った運営を模索している。
世田谷区立小学校全61校が加盟する世小Pの岡部健一会長(45)は「共働きが増えている今、弦巻小のような声が出てくるのは当然の流れだと思う」と話す。「理事会等の承認を得て基本的には受け入れたい」とした上で、「連絡の窓口としては代表者を1人決めてほしい。他校からきている役員・理事にしわ寄せが行かないか、不満が出ないかなど、まずはやってみて調整したい」と新しい形を探る構えだ。
世小Pは昨年度、ホームページを大幅に改良し、アナログ中心で「何度も学校に足を運ばなければならず、負担が大きかった(前出の岡田会長)」単Pとの連絡方法のデジタル化を進めた。これまで世小Pと各学校間で書類を往復させていた形式を、ホームページ上でも連絡事項を見られるようにした。各種会合や広報紙の発行回数も減らしつつある。
岡部会長は「世小Pは活動を絞っていく途上で、試行錯誤しながら進んでいる。減らす・やめるの話も大切だが、何のために世小Pがあるのかという意義についても整理して発信していく必要がある」と考えている。
「例年と同じ活動を」と縛られがちがなP連の担い手
人手の問題については、松戸市連Pも単Pに「人を出せない場合はご相談ください」と伝えている。同市連Pの鈴木公一会長(48)は「委員会活動についても『人が足りなければ活動を縮小してもOK』と伝えているが、『人も活動も各校平等にしなければ』『例年と同じ活動をしなければ』と考える責任感の強い方が多く、なかなか『人が出せない』『活動を減らそう』といった声が上げづらいようで、前年踏襲の活動になりがちな部分は否めない」と話す。市立小中学校全65校のうち、市連P加盟は46校。鈴木会長は「非加盟校の声も聞かせていただいて活動の参考にし、子育て世代が力を合わせて教育環境の改善につなげたい」としている。
そもそもP連って必要なの? ― PTA問題に詳しい加藤薫教授に聞く
P連脱退の背景にある2つのポイント
P連脱退の動きが各地で起こり、柔軟に応じるP連が増えていることについて加藤教授は「とてもいい流れだ」と評価。この動きの背景には2つのポイントがあるという。1つは、任意参加・自由参加というPTA本来のあり方が保護者の間に浸透し、P連の要求に「とても応じられない」とする単Pが出てきたこと。もう1つは、女性の社会進出に伴い、PTA活動に回す余力が減少したことだ。
「単PがP連に加盟するメリットとデメリットを考えたとき、加盟して得られるものよりも、負担の方が大きい」と指摘。「ほとんどのP連は広報紙の発行やバレーボール大会などのイベント運営といった旧来型のPTA活動の型にはめられてしまっており、単Pが抱えている運営上の問題解決を主導するような活動は少ない」とする。
「P連がなくてもできること」ばかり
P連の意義についてはどうか。加藤教授は「P連が自分たちの役割とすることは、ほかの組織ややり方でも十分に代替できる」と一刀両断。「『単P同士の横のつながりをつくる』のであれば、単Pの会長が公民館にでも集まって意見交換すればよいし、『行政に声を届ける』ことは校長会などでもできる。むしろ保護者の声を聞き取って行政に届けるのは校長会の役割なのではないか」と例を示す。
「今後は組織の適正化のサポートをするなど、単Pに必要とされる組織に変わらないとP連が存続する意味はない。それが難しいのであれば、無理をして存続する必要はないのではないか」と話している。
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