PTAのオンライン化、コロナ禍で加速 「しなくてもいい活動」を整理、「今必要な活動」広がる
活動停止の危機、役員の提案で一転
この1年、PTA活動は新型コロナウイルスに振り回された。名古屋市立小中学校PTA協議会が昨年10月に行った調査では、回答した306校のPTAのうち、69%が「2020年度に一度も行事・イベントを行っていない」と答えた。
東京都青梅(おうめ)市の今井小PTA会長の相馬健一さん(41)も「正直、活動が止まると思った」と昨年4月の状況を振り返る。一斉休校が年度をまたいで続き、活動拠点の学校に集まることすらできなかったからだ。
そんな流れを変えたのはあるPTA役員の提案だった。「オンラインなら会わなくても話し合えますよ。やってみませんか」
「子ども残して会議に行かずに済む」
役員らはビデオ会議システムの使い方を学び、夏には9人全員でオンライン会議を開けるまでになった。以前は学校に集まって行っていた会議に自宅から参加できるようになり、「食事や風呂、寝かしつけなど一番忙しい時間帯に、子どもを家に残して会議に行かずに済む」と相馬さん。とりわけ未就学児がいるメンバーが参加しやすくなった。
2月には保護者向けオンラインセミナーも開いた。家族で過ごす時間が増える中、より良い親子関係づくりのヒントを専門家から学ぶというタイムリーな内容。約20人が参加し、「家にいながら話が聞けて有意義だった」などと好評だった。相馬さんは「時間や小さい子がいるなどの制約があった人が参加しやすくなった」と指摘。オンライン化がPTAの裾野を広げていくと感じている。
1回も集まらずにオンライン講座5回
東京都世田谷区の東京農業大第一高校・中等部の保護者と教職員がつくる「教育後援会」は2018年度から、委員会ごとの情報発信や、ファイルの共有ができるPTA運営支援ツールを導入。2020年度は一度も集まることなく、5回のオンライン講座を企画し開催した。副会長の福井聖子さん(43)は「コロナ下の生徒の見守り方を学校カウンセラーから聞いたり、子どもと一緒にネットリテラシー(ネットを適切に使いこなす力)について考えたり、今まさに親子に必要なことが学べた」と話す。
効率化で浮いた時間を通学路点検に
2019年度までに活動のオンライン化を済ませた千葉県松戸市の栗ケ沢小PTA会長の竹内幸枝さん(47)は「2020年度はさらに、惰性で開いてきた定例会議や、慣例で続いていた活動をそぎ落とせた」と話す。
その代わりに新たな活動が自発的に生まれた。1年生の学年委員は、なかなか交流できない新入生を結ぶオンラインの親子レクリエーションを開催。広報委員は校内に入れない保護者にPTAによる読み聞かせの様子を当日中にLINEで送り、親子の会話のきっかけづくりをした。ICT(情報通信技術)化で紙の資料作りなどの雑務が減った執行部は、人の目が減る中で登校する児童の安全を守ろうと、通学路や公園など学区内の危険箇所を調べて行政や警察とやりとりを重ね、改善につなげた。
竹内さんは「コロナ禍でオンラインは生活のインフラとなった。ズームやラインは小さい子がいたり、仕事があったりしてもピンポイントで参加できる最強のツール」とする。ただ直接会って話せば解決できることも、オンラインだとスムーズにいかない場合も。「リアルの良さもある。対面、メール、オンラインと、コミュニケーションの選択肢を増やすことが柔軟性を高める」と話す。
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