PTA活動をプロに外注して負担軽減 役員経験者がマッチングサイト開設 参加しやすくなり、質も向上
安全マップはデザイン会社に 運動会の巡回は警備会社に
兵庫県姫路市立荒川小PTAは本年度、学区内の「こども安全マップ」作製を横浜市のデザイン会社と東京都町田市の印刷会社に発注した。これまではソフトウエアを使える役員2人が、仕事の合間を縫って無償で作っていたが、見やすくまとめられないなど苦労していた。
完成したマップはプロのデザインで、危険な交差点や不審者の出没場所が一目瞭然。A4判のクリアファイル1200枚に印刷し、全校児童に配った。費用は初年度のデザイン制作費4万円と印刷費6万円。同PTA会長の三木貞徳さん(44)は「PTA会費全体からすると大きな額ではなく、通常の予算内で賄えた。時間と労力、毎年のデザイン変更料を考えたら頼んだ方が安いと判断した。これなら、誰が役員になっても心配ない。仕上がりもよく、社会の地図記号の授業でも活用してもらえた」と喜ぶ。
役員らが交代で担っていた運動会の巡回を警備会社に委託したPTAもある。警備員2人に任せ、費用は1日6万円ほど。「子どもの競技をゆっくり見られない」「顔見知りの保護者に、観覧席以外からの撮影や駐輪の注意をしづらい」といった悩みが解消され、防犯効果も上がった。
「PTA’S」外注先は12業種の30社 全国129のPTAが登録
こうした業務の外注先を探しているPTAと、サービスを提供する企業をつなぐのがマッチングサイト「PTA’S(ピータス)」だ。昨年11月にサイトを立ち上げた増島佐和子さん(50)=写真、川崎市=は、公立小のPTA副会長経験者。7割超の保護者がPTAに「負担が大きい・面倒」とのイメージを持っていると報道で知り、1人で起業した。「副会長を2年務める中で、『こうすれば効率的なのに』と何度も感じた。誰かのやる気に頼らなくても組織が回る、持続可能なPTAにしたい」と話す。
ピータスは、PTAが外注したい業種カテゴリーから対応可能な企業を探し、直接連絡を取って交渉する仕組みだ。「原則、会社組織で創業3年以上」など独自の審査基準を満たした企業のみ掲載されており、現在、警備やIT導入支援、印刷など12業種を提供する30社が登録。PTAは無料で登録していつでも活用でき、現在は全国129のPTAが登録する。
各種届出のひな型も提供 「母親の無償の労力」から脱却を
サイトでは、入会届・非入会届・退会届のひな型を提供し、PTAオンライン化などの「おたすけ研修」も随時開催。「PTA予算で学校の備品を買うのはアリ?」「会費徴収を学校に依頼するには業務委託契約が要るの?」といった疑問に、弁護士ら専門家に聞いた上で答えるコーナーもある。
増島さんは「ピータスの目標は、子どもの学校生活に携わりたい親が、負担を感じずに参加できるPTAにすること。その手助けをしたい」と強調する。課題は「長年、主に母親たちの無償の労力で回してきた業務を、有料で外注することへの拒否感を払拭(ふっしょく)すること」。冷凍食品や家事サービスを利用することへの抵抗感と似ているという。「保護者でなくてもよいことは外注して質の安定化を図り、前向きに参加できるPTAにしてほしい」と願う。
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