国も動きだした「重すぎるランドセル問題」 平均5.7キロ、10キロ超える子も
教科書、ノート、ドリル…調査では11キロ超えも
「(小学)3年生になって、社会や理科も始まり、また重くなった」。東京都中野区の女子児童(8つ)を訪ね、ランドセルの中身を見せてもらった。教科書やノート、ドリルなど計17冊と筆箱などで中はぎっちり。重さを量らせてもらうと4.9キロあった。
これとは別に、図書室で借りた本や、水筒などが入ったサブバッグを持って登校することも。母親(46)は「小柄なので1年生の時からつらそうだった。宿題に使うもの以外は、学校に置いてきてもいいのかなと思います」と話す。
子どもに関する消費ビジネスに詳しい大正大人間学部人間環境学科教授の白土健さんは昨年11月から今年5月にかけて、都内の小学1~6年生計91人のランドセルの重さを調査した。全学年平均は5.7キロで、最も重いものは11キロを超えていた。「子どもたちが毎日大変な思いをしていることが分かった」
「脱ゆとり」後、厚くなった教科書が子どもの肩に
ランドセルが重くなっている一因は、教科書のページ数の増加だ。一般社団法人教科書協会によると、いわゆる「ゆとり教育」だった2005年度の全教科書のページ数(1~6年合計、各社平均)は4857ページだったが、「脱ゆとり」の学習指導要領で学習量は増え、15年度は6518ページに増えた。
本年度から道徳が教科となり、教科書もできた。2年後には小学校でも英語が正式教科となる。白土さんは「学力向上の掛け声が強まり、ワークブックやプリントなどの副教材も増えている。その重さが子どもたちの肩にずっしりのしかかっている」と指摘する。
成長期に悪影響「腰痛の子どもは増えている」
重すぎるランドセルが問題視されるのは、体への影響が懸念されるからだ。世田谷区の香取整形外科院長の香取勧さん(46)は「一時的でも、肩や腰、脊柱は変形する。子どもの成長に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘。適正な重さは体重の15%程度で、小学校の低中学年なら2~3キロ程度になる。
ランドセルが重すぎると後ろに重心が引っ張られ、特に腰への負担が大きくなる。香取さんは「腰痛などを訴えて受診する子どもは昔よりも増えている印象だ」と話す。
「置き勉」広がるか?国の通知は大きな一歩
文科省の通知は、宿題など家庭学習で使わない教科書やプリントなどを机の中に置いて帰る「置き勉」や、多くの学用品を使うことが分かっている場合は、あらかじめ数日に分けて持ってくるよう伝えるなど工夫例を示している。
「国が通知を出したことは大きな一歩。学校によって取り組みへの温度差があるので、工夫している学校の例などを広めていきたい」と白土さん。一方、より根本的な対策として「教科書や時間割編成のあり方なども考えていく必要がある」と指摘する。
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