銭湯でドキドキ「母親が子どもを見ないなんて…」でも杞憂でした
中村真暁 (2023年12月7日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
1歳の娘を連れて、家族と銭湯へ行きました。私一人で娘をみるのは大変だろうと、夫と小学生の息子2人は娘を引き受け男湯へ、私は一人女湯へと分かれました。
「ギャーギャー」。浴室に入るや、壁を挟んだ男湯から大きな娘の泣き声が飛び込んできました。落ち着かせようと必死なのか、しまいには夫の子守歌まで響き渡る始末。「うるさいな」と不快に思う人がいるかもしれない。「母親が子どもを見ないなんて、どういうつもり?」と眉をひそめられるかもしれない。不安が頭の中を駆け巡り、体が縮こまりそうでした。
恐る恐る脱衣所を出ると、待っていたのは笑顔の4人。息子2人は夫を手伝い、娘の体を洗ってあやしたそうで、様子を見ていた男性客に「えらかったな」と頭をなでられていました。「昔はよく泣いている赤ちゃんがいたわね」と好意的に話す客の会話が聞こえ、番台の女性からは「お父さんの育児姿が、他のお客さんの刺激になってよかった。『あなたも育児してほしい』なんて話してる夫婦がいたわ」と声をかけられました。
育児をしていると、子どもが他人に迷惑をかけないかと、気を張る場面は少なくありません。快く受け入れられる体験に、どれほど励まされることか。「育児は母親の仕事」というステレオタイプに縛られ、そこからの逸脱を恐れていた自分にも気付かされました。
また家族で銭湯へ行こうと思います。心も体も温まるから。
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