「子どもとキャッチボールするのが夢」という人をバカにしてましたが…〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
「クリスマスプレゼントの候補、アマゾンのほしい物リストに入れといたから」と長男。うちでは、毎年サンタクロースがプレゼントを持ってくることになっているので、「なにが?」と僕がとぼけると、「だってパパがサンタでしょう?」と声変わりのはじまった声で言った。
ほしい物リストに入っていたのは、野球のグラブとボール。冬休みに入った長男は、毎朝、キャッチボールしようと誘ってくる。本当のことを言うと僕は、「子どもとキャッチボールするのが夢」という人を、「肉じゃが作ってくれる彼女が欲しい」という人と同じぐらいバカにしていた。
でも違った。キャッチボールは楽しい。夢にしても問題ないぐらい楽しい。野球というスポーツの一部分の練習にしておくのが、もったいないくらい楽しい。
しかし、松坂大輔が引退した年にやってきた、遅咲きルーキーの僕の肩は、連日の登板で悲鳴をあげている。それでも、楽しくてやめられない。
そんなことをしていたら年が明けていた。「宿題」と言っただけで、アレルギー反応を示す次男と違って、コツコツ派の長男は、冬休みの宿題をいっきに終わらそうと、ひとり机に向かっていた。
「うまく書けないんだよ」と長男が、「ライト兄弟」の読書感想文の宿題を手伝ってといってきた。書きかけの原稿用紙を見てみると、「ぼくは、この本をよむまで、ライト兄弟は、ライトを作った兄弟だと思っていました」と書いてあった。必死で笑いをこらえる。
いい一年になりそう。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。最新刊は「お父さん、まだだいじょうぶ?日記」(リトルモア)。このほか著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(同)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。11歳、9歳、4歳、1歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。