「エンガブ」 Takassyさん 余命宣告された父に、自分はゲイだと告白しました

草間俊介 (2021年11月22日付 東京新聞朝刊)

ENVii GABRIELLAのTakassyさん(市川和宏撮影)

出張の多い父 母は家中に写真を

 針のように細いピンヒールを履き、歌って踊る3人組「ENVii GABRIELLA(エンヴィ・ガブリエラ)」のリーダーです。YouTubeチャンネルへの登録者は16万人を超え、ラジオのレギュラー番組も。ファンは20~60代の女性が多いです。

 父母と妹の4人家族です。父は大手カメラメーカーのカタログなど広告ツールを手がけるデザイナー。専業主婦の母も出産前まで、同じデザイナーでした。2人はデザインの専門学校の同級生。母のほうが成績がよく、父は「デザインは俺より上かも」と母を尊敬していました。

 母は母で父が大好き、父は出張が多く、寂しさをまぎらわすため、家中に父の写真を張っていました。

 父は「デザイナーはスーツなんか着ない」と、いつもアロハシャツで出勤。かっこよくて、かっこよくて。「自分の好きなことを仕事にしろよ」と。高校卒業後に音楽の専門学校に進むのに反対はしませんでした。

父の言葉を励みに、音楽を続けて

 卒業後は派遣で働く傍ら、音楽活動を続けていました。「父が黄疸(おうだん)がひどく病院に行った」との連絡で駆けつけると、「がんで余命6カ月」。父は自然体で告知を受け入れていました。

 それまで、自分がゲイと伝えていませんでした。20歳で同性の恋人ができた時は、友だちと紹介していました。ただ隠し事をしたまま父が亡くなったら嫌なので、病院で「私も言うことがある」と告白しました。母が「何だ、そんなことか」と。両親とも気づいていたものの、言わないようにしていたのでしょう。

 父の病気で音楽をやめようかとも思いました。父は「おれのせいでやめないでくれ。死んでも死にきれない」。その言葉に励まされ、音楽を続けました。

 父は最期まで「苦しい」とか言わず、亡くなりました。父55歳、私25歳の別れです。

 それから10年余。大手レコード会社からメジャーデビューでき、記者会見もさせてもらいました。定職に就かず、結婚もせず、時に衣装代とか母に無心してきました。「迷惑をかけたので会見の場に来て」と、母に来てもらいました。

 会見の場に立ち、「やっと父に報告できる」とホッとしました。会見場では母と話をできませんでした。しかし家に帰ると、仏壇の前に私たちユニットのグッズがあり、線香をあげた跡も。母が父に報告してくれたのです。よし、がんばろう。熱いものがこみ上げてきました。

 コロナ禍です。私たちを見て「元気をもらえた」と言ってもらえるのがうれしい。明るく楽しく元気よくがんばっています。

Takassy(タカシ)

 神奈川県生まれ、音楽専門学校ボーカル科を卒業後、本格的に音楽活動を開始。2017年3月、総合エンタメユニット「ENVii GABRIELLA(エンヴィ・ガブリエラ=エンガブ)」を結成。今年10月、「Moratorium(モラトリアム)」を配信リリースしてメジャーデビュー。活動・配信予定などはENVii GABRIELLAの公式サイトで紹介している。

コメント

  • 私はエンガブのファンで見たんですけどお母さんもお父さんもその考えを否定していなくてとても優しい人だなと思いました。しかも仏壇にグッズがおいてあってお父さんも喜んでいそうですね。
    りゆ 女性 10代 
  • 2年前に偶然見た動画の力強さと美に惹かれ、それ以来、普段だけではなく、気持ちが沈んだり、悩んだり苦しくなってる時にもエンガブさんから力をもらっている気がします。何と言うか…前を向きたくなる気がするんで
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