四男誕生でお義母さんがやってきたら、快適すぎて怖い〈お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
四男は、あっという間に生まれた。夜の7時前に陣痛が始まって、9時すぎに生まれた。約2時間。さすがに4人目になると、産道がしっかり舗装されているのか、びっくりするぐらい早かった。
早すぎて、先生が分娩(ぶんべん)室に来る前に生まれた。その上、無痛分娩の麻酔が効く前に生まれたので、普通に痛かったらしい。「麻酔代損したな」と僕が言ったら、「無事生まれたからいいの」と嫁さん。確かに。
四男が生まれた日から、お義母(かあ)さんがうちに来てくれた。おかげで、おかずの品数がいつもより多く、部屋もいつもよりきれい。畳んだ洗濯物の角がキリッとしているし、子どもたちは、お義母さんが大好きなので大喜び。ついでに、自家製のぬか漬けまでついてきた。快適すぎて怖い。
僕も洗濯物ぐらいは干そうと思ってやっていると、
「あらやだ、わたしのパンツあったでしょ!」とお義母さん。騒がなくてもいいんですよ。僕は、この快適な生活が手に入るなら、お義母さんの、このベージュのパンツを、映画「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」のハンカチのように干したっていい、とさえ思っているぐらいなんですから。
そんな快適な2週間がすぎ、お義母さんは帰っていった。そして、子どもが1人増えて、よりハイパーな日々を過ごしている。秋風にたなびくベージュのパンツに導かれ、お義母さんがまた来てくれる日を夢見て。
※第1金曜日掲載
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(リトルモア)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。10歳、7歳、3歳、0歳の4兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
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