〈奥山佳恵さんの子育て日記〉19・ダウン症の次男が一人暮らしするための、はじめの一歩
ムスカ大佐みたい「めが、めがー」
昨日、ダウン症のある次男、美良生(みらい)(9つ)と一緒にお風呂に入りながら、ふと「そうだ、これも試しにやってもらおう」とシャンプーで髪を泡だて、シャワーで洗い流すという一連の動きを「一人で」チャレンジしてもらいました。
初めてなので上手にできず、「めが、めがー」と「天空の城ラピュタ」で城を剥奪しそこねたムスカ大佐みたいに、目に入ってしまった泡と格闘する次男。これでいいのだ、小さなことからコツコツと。ダウン症のある子は「ゆっくり育っていく」のが特徴でもある。
見た目が若く見える分、ついウッカリ、親である私たちが手を出してしまっていることに最近気がついた。「私は永遠、上履きを洗わなくちゃならないのかな」とお友達につぶやいたら、「自分でやらせてみな」と言われたことがキッカケ。「いずれ一人暮らしをしてもらいたいんでしょ?」。そうでした! 夢物語では終わらせない。はじめの一歩を意識しないと!
できなかったら誰かに頼ればいい
次男がわが家にやってくるまでは「自立」とは自分の力で立つこと、という解釈しか持ち合わせていなかったけれど今は違う。立ちたくても立てない人もいる。何が何でも全部「自分で」自分のことをすることだけが自立じゃない。できないなら誰かに「お願い」したらいい。人は誰しも完璧な存在ではなく、完成形を目指すために生まれてきたわけじゃないのだから。「ならば何のために?」と、もし聞かれたら、「そりゃ、楽しむために決まってるー!」と小躍りしながら答えます。
できなかったら頼ればいい。そのために、世の中には自分以外の人や物が存在している。かくいう私は、料理が致命的に下手です。主婦歴約20年。白菜ひと玉100円が格安だということは分かる。思わず買う。けれど、さてこれをどう調理したらいいのか。私に欠けている能力です。
そんな私に寄り添ってくれるのが、お料理アプリ! 本当に助けてもらってる! 世の中にはできる人とできない人がいる。ふぞろいであることを利点にして、補い合っていけたらいいと思うのです。
もちろん、「できた」が増えればその分生きやすくなるだろうから、どんなことでも一度はチャレンジしてもらいます。近々、次男が使いやすそうな「靴洗い」グッズを買いに行こう。もしできなくても大丈夫。協力するから! 私と次男以外の家族の皆さん、どうぞそのつもりで。 (女優・タレント)
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