児童手当の打ち切り「夫婦どちらか年収1200万円以上」で決着 子ども61万人が対象外に 特例給付で与党合意、子育て世代に動揺

川田篤志 (2020年12月11日付 東京新聞朝刊)
 政府・与党は10日、中学生以下の子どものいる世帯に給付する児童手当について、高所得世帯向けの給付を一部廃止することで合意した。現在は一定の年収以上で子ども1人当たり月5000円だが、2022年10月をめどに受給できる年収の上限を設ける。政府は近く、全世代型社会保障検討会議(議長・菅義偉首相)を開いた上で、閣議決定する。来年の通常国会で関連法案の成立を目指す方針。

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年収960万~1200万円なら引き続き月5000円

 高所得世帯向けの月5000円の給付対象は現在、配偶者と子ども2人が扶養に入る4人世帯の場合、夫婦の「収入の高い方」の年収が960万円以上。新たな仕組みでは、この線引きを維持する一方、夫婦のうちのどちらかが年収1200万円以上になれば支給を打ち切る。受給対象から外れる子どもの数は約61万人と見込まれる。960万~1200万円未満は引き続き、5000円が給付される。

 政府は、今回の一部廃止で捻出する約370億円を待機児童対策に充てる。2024年度までに14万人分の保育施設を整備する財源とする。

「夫婦合算で年収1500万円」案から方針転換

 政府は児童手当の見直しを巡り、当初は所得制限額の判定基準を「夫婦合算」に改めた上、年収1500万円に変更する案を軸に検討していた。だが、公明党が「子育てのお金がないから共働きをしており、極端な政策変更は混乱を生じさせる」と反対したことを踏まえ、方針を転換。基準は、夫婦の「収入の高い方」の年収を維持する。

 児童手当は、年齢に応じて子ども1人当たり月1万~1万5000円を支給する。2018年度は1660万人が支給対象で、高所得世帯向けの給付の受給者は約100万人。 

「第2子、3子がほしかったけど悩んでしまう…」子育て当事者から不安の声

「いくらもらえる、と計算していたのに」

 児童手当の見直しで高所得世帯向けの給付を一部廃止する方針が決まったことについて、子育ての当事者からは不安の声が上がった。与党内にも、菅義偉首相が重視する子育て支援に逆行するという不満がくすぶる。

 「第2子、3子をほしいと思っていたけど、悩んでしまう」

 昨年12月に長女を出産し、育休中の公務員女性(30)=長野県=は、こう打ち明ける。会社員の夫(30)と共働きで、合わせた年収は約1000万円。今は月1万5000円の児童手当を満額受給しているものの、政府・与党が児童手当の縮減にかじを切ったことで「子どもが成長するまでにいくらもらえると計算していたのに、廃止されることがあると思うと家族計画に影響する」と不安を口にする。

予算付け替え「少子化対策に矛盾する」

 今回の見直しは待機児童対策の財源不足を解消するのが目的。子育て支援策の予算を削って付け替える形で、与党内には少子化対策の充実・強化を掲げる首相の方針と矛盾するという指摘も根強い。自民党参院議員は「子育て予算内だけでやりくりしているから成果が上がらない。菅政権の『縦割り行政の打破』は看板倒れじゃないか」と批判する。

 高所得世帯向け給付の一部廃止で捻出できる財源は400億円にも満たない。与党内にも「追加経済対策の規模が40兆円に及ぶのに、なぜこれだけの金額を残せないのか」(公明党幹部)といぶかる声もある。与党合意を受け、記者会見した公明党の竹内譲政調会長は「今後、子育て対策の財源をしっかり確保してもらいたいと政府に申し入れたい」と注文を付けた。

児童手当とは

 中学校卒業までの子どもを養育する人に国などが支給する。1人あたりの月額は3歳未満が1万5000円、3歳から小学生が1万円(第三子以降は1万5000円)中学生は1万円。所得制限があり、養育する人(夫婦共働きの場合は収入が多い方)が限度以上の場合は「特例給付」として月額5000円を支給。所得制限は扶養親族の数によって異なるが、扶養親族が2人なら収入917万円、3人なら960万円が目安。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年12月11日

コメント

  • 所得によって、児童手当がもらえないだけではなく、高校無償化、通学のバスなどの無料も該当しないです。世帯合算ではないと不公平感を感じます。
    ゆうこ 女性 40代 
  • お金は確かにないです。さらに親戚は地方で誰もいない。夫も単身赴任、息子はアスペルガー、娘はアトピー性皮膚炎がひどく毎日ケア。そんな生活なのでせめてお金の心配がないのが助かります。 ただお金を支援
    はな 女性 40代