子どもが包丁を安全に使う3つのポイント「猫の手、滑り台、おやすみ」 料理を楽しめば苦手な食材も克服

長田真由美 (2021年6月11日付 東京新聞朝刊)

小出さん(右)が見守る中、ニンジンを細切りにする子どもたち=名古屋市で

 子どもが料理に興味を持ったら、親子で一緒に挑戦するチャンス。安全に料理を楽しむこつを、一般社団法人「日本幼児食協会」代表理事で、名古屋市内で子ども向けの料理教室を開く小出みなこさん(43)に聞いた。 

米とぎ、野菜洗い…2歳でもできること

 5月下旬、3歳から小学校低学年までを対象とする料理教室。1年前から通う光井結都(ゆいと)君(4つ)がリズム良く細切りにするのは、炊き込みご飯に入れるニンジンだ。母親の真子さん(37)は「習った料理を家でも作ってくれる。苦手だったエビとネギを食べられるようになった」とほほ笑む。

 「料理は2歳ごろから始められる」と小出さんは言う。自我が芽生え、自分で何でもやってみたいと思う時期だ。米をとぐ、野菜を洗うなど簡単なことからでOK。教室で3歳以降を対象とするのは、集中して人の話を聞けて、けがも防げるという理由だ。

包丁はこぶし2つ分 よく切れるものを

 包丁の刃の長さは、使う子のこぶし2つ分が目安。軽量で、あえて切れにくくした子ども用もあるが、切れ味の感覚をつかむには、しっかり重さがあって、よく切れる包丁がいい。軟らかい豆腐と、硬い根菜類では切るときの力加減が異なる。自分で力を調節できればけがのリスクが減る。

 小出さんによると、包丁を安全に使うために大事なのが「猫の手」「滑り台」「おやすみ」の3つだ=上のイラスト。「猫の手」は食材を押さえる手の形。軽く指を曲げ、猫のような手にする。切って刃についた食材を反対の手で滑らせて落とす「滑り台」は、刃をまな板につけ、浮かせないのがポイント。使い終えたら刃を奥に向け「おやすみ」させる。

味覚形成のため だしの「うまみ」を

 小出さんが最初に教える料理は、和食の基本「だし」の取り方。昆布やかつお節、煮干し、シイタケなどから出るうまみは、お吸い物や肉じゃがなどさまざまなメニューに生かせる。「味覚は幼児期に形成される。子どものうちに、うまみに慣れて」と呼び掛ける。

 だしのきいたみそ汁は、具がネギだけでも十分においしい。教室で人気なのは「鶏肉のみぞれ煮」だ。胸肉を一口大に切って片栗粉をまぶしたら両面を焼き、大根おろしとだし汁2カップ、しょうゆ・みりん各大さじ5を加え、10分ほど煮込むだけ。厚揚げやシメジを足してもいい。

調理の過程を知ると、警戒心が解ける

 小出さんの息子は1歳のころ、白米としらす、納豆しか食べなかった。そこで一緒に料理教室に通ったところ、次第にいろいろ食べられるように。「完成するまでの過程を知れば警戒心が解ける」と感じた経験が今につながった。

 気分が乗らないのに、無理にやらせるのはけがのもとだ。やる気が出たときに「お願いできるかな」と声を掛けるといい。「小さいころの食体験は忘れない。料理で子どもの五感をはぐくんでほしい」と訴える。

「簡単だし」のレシピ

【材料】

だし昆布10グラム、かつお節30グラム、水1リットル

【作り方】

  1. 鍋に水を入れ、昆布とかつお節を入れる
  2. 沸騰直前まで加熱したら昆布を取り出し、引き続き火にかける
  3. 沸騰したら火を止めて、かつお節が沈むまでそのまま置く
  4. ざるにキッチンペーパーを敷き、静かにこす