今の子どもは「生卵は割れるけど、タオルを絞れない」…なぜ時代とともに変化が?

野呂法夫 (2020年5月2日付 東京新聞朝刊)
 
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(左)正しいタオルの絞り方。この状態からねじって、手の甲が上を向く (右)手の甲を上にして順手で持つ”横絞り”の子どもも多かった

 生卵は上手に割れるけれど、ぬれたタオルをしっかりと絞れない―。子どもの生活技術などを研究するNPO法人「子どもの生活科学研究所」(東京都新宿区)の実技調査で、こんな現代っ子像が浮かび上がった。新型コロナウイルス対策で在宅時間が増える中、同法人は「家庭で親子一緒に『暮らし力』を試しみてはいかが」と呼びかける。

暮らしの知恵を引き継げるか 1469人に調査

 「家事の便利さを追い求めてきたが、暮らしに必要な手作業や知恵が次代に引き継がれているだろうか」

 子どもの生活科学研究所の大﨑利紀子(おおさき・りきこ)さん(56)=横浜高等教育専門学校非常勤講師=は、暮らし力調査の狙いを話す。

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大﨑利紀子さん

 調査は2018年8~10月、福島県いわき市、埼玉県戸田市、栃木県宇都宮市の会場と横浜市の神奈川県立金沢総合高校で実施。3~6歳児、小学1~6年、中学、高校生の男女計1469人に実演してもらった。結果は、調査研究報告書にまとめた。

「タオルを絞る」A判定は高校生でも5人に1人

 拭き掃除では洗いおけやバケツでタオルを洗って絞り、テーブルなどを拭く。

 調査の1つ「タオルを絞る」は薄手の浴用タオルを使った。子どもがタオルを逆手で持って両手を逆方向にねじり、手の甲が上にくる絞り方をすれば、A判定の「合格」とした。

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正しいタオルの絞り方

 合格率は小学校入学時から徐々に高くなり、6年で約24%まで増えたが、中学生になると18%、高校生は17%と5人に1人しかできなかった。

 多くが手の甲を上にした順手で持つ横絞りだった。間違いではないが、逆手のほうが楽にしっかりと絞れる。中には握り絞りや、ねじり巻く姿も見られた。

 同様の調査は、今回の調査対象の親世代が子どもだった33年前の1985年に実施。当時は中学生(46%)が2人に1人、小学3年(約33%)でも3人に1人ができていた。今回の合格率の落ち込みは、男子より女子が大きかった。

「生卵を割る」小6で75% 前回調査より向上

 調査員が「生卵を丼に割ってください」と伝えた。子どもが卵を何かに打ち付け、その割れ目に両手の親指をあてて黄身を壊さずに上手に落とせるか―。

 合格率は3歳の10%から年齢が上がるごとに増え、小学6年、中学・高校生がいずれも約75%だった。

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正しい卵の割り方。割れ目に両手の親指をあてて、パカッと

 前回調査と比べると、小学4、5年は微減だが、それ以外は小学1年が43%と大幅に増え、6年も9.2ポイント、中学生は6.3ポイントと全体的に増えている。

 失敗例として「生卵を丼の底で割る」「割れ目に親指を使わず黄身をつぶす」「割れ目から殻をむこうとした」などがあった。

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「日本茶を入れる」のに…マグカップ派が多い

 今回新たに調べたのが「日本茶を入れる」。急須などお茶一式を用意。正しく入れられたのは、小学6年で7割を超えたが、中学生が64%と落ち、高校生でも75%にとどまった。

 中には「茶葉をやかんに入れた」「茶さじを使わず茶葉を手でつまみ急須に」「急須をわしづかみにして注いだ」例も。器は湯飲み茶わんではなく、マグカップを選ぶ子も目立った。

使い捨てふきんの普及、料理事情の変化が影響

 調査では生活習慣も聞き取った。大﨑さんはタオル絞りについて「前回よりもさらにA判定が減った。市販の小さな雑巾や除菌の使い捨てふきんが普及し、長いタオルで拭く経験が乏しかった」とし、「中高生でもお茶を入れられない子が目立ったが、ペットボトルのお茶を飲む家庭が増えた影響もある」と分析。

 一方、上手な生卵割りが増えたのは「女性が働きに出るようになり、子ども料理番組や夏休みの親子教室から男子も料理する機会が増えた」と指摘。そして「受験も部活も大切だが、親子が一緒の時間をつくり、家事作業をして教えてほしい」と話している。

「子どもの生活科学研究所」による調査研究報告書は、PDFでこちらから読めます。

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