児童手当の特例給付廃止案に不満続々 「東京で年収960万円は高所得じゃない」「第2子あきらめる」

(2020年12月1日付 東京新聞朝刊に一部加筆)
 中学生までの子どもを育てる人に支給される児童手当。高所得世帯の子1人につき5000円を給付する特例を廃止し、浮いた財源を待機児童対策に使う案が検討されています。政府の案や与野党の反応などを伝えた「児童手当を削って待機児童対策に?」の記事には、当事者となる共働き家庭などから廃止案への批判や落胆の声が寄せられています。

※政府・与党は12月10日、高所得世帯向けの給付を一部廃止することで合意。夫婦のうちどちらかが年収1200万円になれば支給を打ち切る方針となりました。

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待機児童対策にするなら、他の財源を

 現行の所得制限は共働きの場合、収入の多い方が基準で、扶養親族が3人なら年収960万円が目安。この基準を夫婦合算に変更することも検討されています。「東京で子どもを育てながら生きていくにはかつかつで生きていくのに必死」「東京の物価や家賃相場を踏まえた上で検討して」など、「高所得」の基準が実態に見合っていないという不満が出ています。

 「児童手当を廃止して待機児童への財源にするのではなく、ほかの財源を見直すべき。子育てしやすいようにと言っているのに」「今、その手当を頼りに生活しているので廃止されたらかなり痛手」「将来税金を納めることになるであろう子どもたちへの手当から減額や廃止すること自体が間違い」など、子育て当事者からの声は切実です。「3人子どもがほしかったけれど、3人目を産むのをやめる」「この内容が実現するなら、第2子はあきらめる」など子どもを産み控えることにつながる、という声もいくつもありました。

「格差を考えれば妥当」と賛同の声も

 新型コロナに対応する医療職の方からは「この状況下で一生懸命働いているのに、手当ももらえなくなるのはやっていられない」とも。

 一方、「格差を考えれば妥当」「高所得世帯に同等の手当があるのに違和感があった」と、特例給付廃止への賛同もありました。

 児童手当はかつて、子ども手当の名称で、家庭の所得にかかわらず、子ども一人一人の育ちを社会で応援するという理念で始まりました。「今後も子育て支援が改悪されるのではないかと不安」「このような施策をされてしまうと子どもを持ちたくないと思ってしまう」。記事に寄せられたコメントからは子育ての当事者たちが、国の姿勢を敏感に感じ取っていることが伝わってきます。

【2020年12月11日追記】特例給付廃止について政府・与党の方針が決まったため、説明を加えました。