「保育士が自腹で絵本購入」 保育園の窮状訴えるツイートが反響 古本店が1万冊を無償提供

(2019年7月24日付 東京新聞夕刊)
 絵本を買えない保育園の窮状を訴えた保育士のツイッターが注目を集めている。「自腹で購入した絵本を見てください」と訴える投稿に「私もです」など同業者たちからの反響が続々。投稿をきっかけに、全国の保育園に絵本1万冊の無償支援に乗り出す古本店も登場した。

東海地方の保育士が投稿した内容(ツイッターから)

4年で60~70冊購入…「これが保育現場のリアル」

 ツイッターで訴えたのは東海地方の保育士の女性(30)。先月9日、数十冊の絵本の写真とともに「自分の子どももいないのに、全て担任のポケットマネーです。これが保育現場のリアルです」とつぶやいた。

 女性は、認可保育園などで担任をした約4年間で60~70冊を購入。手取りで18万円ほどの月給のうち、絵本や保育で使う折り紙などに多い時で合わせて1万円近くを支出した。年齢に応じて実際に使える絵本が限られ、古くなってボロボロのものも多かったという。「図書館の本は汚れたら困るし、経費を削るように求められ、購入してほしいと言えなかった」

 昨年12月から「保育士ブラック」のアカウント名で、保育士の仕事内容や問題点を投稿してきた女性は「絵本や教材を自腹で買わなくてはならないのはおかしいと思い、知ってほしかった」と語る。

「こども古本店」申し込んだ園に絵本を送ります

 多くの反響があった投稿を、愛知県北名古屋市の「こども古本店」店主の中島英昭さん(37)は、知人で千葉県市川市のフリー編集者、原陽子さん(49)からの連絡で知った。


〈関連記事〉そもそも「質の高い保育」って何だろう? トップランナーに聞く


 中島さんは、リサイクル絵本のネット販売をしながら、被災地や発展途上国に絵本を贈る活動をしてきた。寄付や買い取りで得た絵本の余剰在庫などを支援用に確保しており、今回保育園に提供することにした。

支援用の絵本を仕分ける「こども古本店」の中島英昭さん=愛知県北名古屋市で

 「どの保育園に通うかで、絵本を楽しむ機会が奪われる子どもがいるのは悲しい」と中島さん。今月5日に店のフェイスブックで告知し、すでに6000冊分は送り先が決まった。東京や神奈川、沖縄など全国から申し込みがあり、順次発送している。

 荷造り費用や送料も店側が負担する。中島さんは「短期的には赤字。でも、広い視野で見れば子どもたちが絵本を好きになり、手に取る機会が増えてくれたらいい」。

 無償支援は、絵本が購入できない保育園が対象。問い合わせ、申し込みは「こども古本店」のホームページから。絵本はなくなり次第終了。

絵本やおもちゃの購入費は各園の裁量 専門家「保育の質に直結する問題」

 絵本購入費は、保育園によって金額に大きな開きがある。各園の裁量で予算額を決める「保育材料費」に含まれるためで、保育問題に詳しいジャーナリストの小林美希さんは「ここ数年、コスト削減で保育材料費を削る園が目立つ。保育の質や保育士の処遇に直結する問題であり、目を向けて」と求める。

 小林さんによると、株式会社が運営する定員100人規模の認可保育園で、絵本やおもちゃなどの購入費に充てる保育材料費が年間20数万円の園もあれば、500万円以上の園もあった。絵本が数冊しかない園も見たといい、運営者の方針にも大きく左右されるという。

 小林さんは「絵本やおもちゃの配置状況、使用頻度は良い保育に関わる」と説明。「保育現場を知らない運営者は絵本やおもちゃまで目がいかない。保護者や保育士が状況を明らかにし、運営法人や行政に改善を訴えていかなければ」と話した。

コメント

  • 娘が、4大卒業後、正規の保育士としてこども園で働き始めましたが、すでに教材を自腹で数万円購入しております。今後は絵本を購入する必要が在ると聞いてきたそうです。 もちろんまだ給料などは頂いておりま
    ボンネビル 男性 50代 
  • 愛知県岡崎市の嘱託保育士です。絵本だけではないです。おもちゃも家にとっておいたおもちゃを貸したり。手作りおもちゃは、自腹で材料費購入。部屋で使うカゴやら備品は自腹。それを嘱託保育士も用意したりする。