「教育虐待」当事者の悲鳴が続々と 「プレッシャーに殺されそう」「20年経ってもつらい」
地雷に怯え続ける日々…恐怖がトラウマに
「私の場合は東大卒の父からでした。受験に関係なく点数が悪ければ当然締め上げられますが、満点でも『俺の方が優秀だ!』と怒鳴られるのです。(中略)どこに地雷があるか常に怯える日々でした」。現在は自分も子育て中という女性は今も「過去の恐怖に悩まされることもある」といいます。「子どもへ虐待の連鎖をしないよう気をつけるばかりです…」とつづっています。
教育虐待を受けた傷は、年月を経てもトラウマ(心的外傷)となり、影を落としているという指摘は他にもあります。
「第一志望の学校に入ってもチャラにはなりません。(中略)30代半ばになり、中学受験から20年以上経ちますが、未だに間違える度につねられた記憶、飛び降りて死にたいと思った情景を思いだし、辛くなります。友達と遊ぶ時間は全くなく、テレビも見ず、朝も夜もずっと勉強させられていました」
「40代になった今も記憶は消えません。勉強も、生活態度も、100点でないと許さない母でした」
「27歳・女です。(中略) 5歳(幼稚園の年中)の頃、父親に夜中の0時を過ぎるまで怒鳴られながら勉強させられていた記憶があります。私が勉強=しんどいもの・苦しく辛いものと認識したのは幼少期の教育虐待がきっかけだと思います」
親を個人として糾弾しても、解決しない
この記事でインタビューした、教育ジャーナリストのおおたとしまささんは、著書「ルポ 教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち」(ディスカバー・トゥエンティワン)の中で、「社会全体の教育システムや教育観を変えないと、エデュケーショナル・マルトリートメント(教育上不適切な扱い)はなくならない」と指摘。「教育虐待をしてしまう親を個人として糾弾したところで、根本的な解決にはならない」と著しています。
親の立場から寄せられたコメントを読むと、おおたさんの指摘の重要性を感じざるを得ません。
「毎日しています。しているつもりはないけど、そこから考え方を変えられません。変えられないというよりをそう考えているという以前に、私自身がそれなのです。子どもをありのままに受け入れたいとは思いますが、私のありのままを表面的に変えたり2、3日変えてみても根本の部分に引き戻されるのです」
「教育虐待、してますね。世間が順位を競わせるでしょう?負けたくない。1番が好き。私もずっと成績が良かったから子どもにもそうあってほしい。ポテンシャルがない子ではないので、期待してしまいます。(中略)教育虐待と言われようががっつり教育して、ストレス耐性を強くして、社会に放り込みたいです。だから教育虐待を止めきれません」
「成績がよくて当たり前」と言われ続け
今まさに、苦しんでいる子どもたちからも声が寄せられています。
「定期テストのたびに(兄は)もっと上だったなどと比べられる」「『塾に行ってるからには、それなりの結果出してね』と言われる」。中学3年の女子は、母親の重圧が「つらい」とつづっています。思い切って「プレッシャーになるからやめて」と伝えると、「せっかく、励ましてあげようと思ってるのにそんなこと言うの?」と言われ、「『ごめんなさい』と謝るしかなかった」といいます。
中学2年の生徒は、かつての中学受験を振り返っています。「夜中まで勉強させられて、弱音を吐けば『じゃあ、やめる?』と言われ、それも嫌だから泣く泣く勉強して…」。偏差値の高い学校を目指し、周囲から「頭が良い」と言われたり、親からも「成績がよくて当たり前」と言われ続けていたそう。「そうならなくちゃと自己暗示をかけ続けた。そうでもしないとプレッシャーに殺されそうだった」と書いたこの生徒は、こう続けます。「子どもは何も考えていないと思っているかもしれませんが、それは違います。私たちにだって意思があり、意見がある。大人にとっての『当たり前』は私たちにとってはそうではありません」
自殺を考えた中2 「親は謝ってほしい」
自殺を考えることすらあるという中学2年の子は、この記事に寄せられた他の子どもたちからのコメントを読んでこう書いています。「私以外にも母のようなクズのせいで悲しむ人がいる世界が信じられないし、そんな世界にいたくもありません。なのでこれをみた親(私の母のような人)が少しでも態度を改め子供に謝ってほしいです。土下座してほしいくらいです。勿論謝っただけでは許されませんし一生許されません。わかってください。いじめで自殺してしまう人だけじゃなく、親のそういう態度で自殺する方もいることを」
振り絞るような子どもたちの訴えを大人の側がもっと、深刻に受け止めるべきではないか。改善のためにできることはなにか。考えていかなくてはならないと感じています。
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